記憶は凹凸で

彼女といた日々は、嬉しかったと

日記に書かれている。

その全ては、手で水を掬うと隙間から

溢れていくような、、そんな感覚だった。

これをいうと、悲しませてしまうから

僕と一緒に燃やしてしまおう。

いや、明日には忘れているから

残しておこう。


体が動かなくなってきた。

どうやら、もうすぐ死んでしまうようだ。

走馬灯は、期待しないでおこう。

損をするだけだろうから。

けれど、僕は思いの外嬉しかった。

悲しい記憶が片手で数えるくらいしか

思い出せなかったから。

僕が墓に持って行けるのは、

日記をコピーしたものと

彼女に対する後悔だけだ。



みんなが嘘をついてくる。

彼が息を引き取ったって

いや、嘘ではない事を知っている。

でも忘れている。

絶対に忘れている。明日になったら


私は、目の前の石の意味を知っている。

けれど、忘れている。

それが悲しいから、

きっと明日も忘れている。

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