親殺しのパラドックス その少年は僕だった

僕は、慣れた手つきで、

テレビをつけニュースを見る。


泣いた親の顔が出てくる。

そして、5歳くらいの子が泣いている。

その後、モノクロの大人の顔が出てくる。

僕は、テレビを消した。

ピンポーンという音が部屋に鳴り響く。

その音から逃れるため、

40年前のヒットソングを聴きながら、

40年前に刊行された小説を読む。

ちなみに、僕の親は60歳だ。


親との会話を思い出す。

40年前くらいに

通り魔から救ってくれた恩人がいるんだよと

顔を真っ赤にして語っていた親を思い出す。


僕は、手紙の一つくらいないかと

家の中を漁る。何もなかった。


僕は、家を出る。フラッシュに囲まれて

僕はこいつらを

一種のボディガードだと思っている。

けれどそいつらは、

一回も役に立ったことはない。


僕は、その場に力無く倒れる。

涙を流した少年が僕を見ている。

僕は、少年の包丁を握った

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