第12話 黒幕
ドンキホーテ達はついに外に飛び出した。急いで出てきた彼らを、発掘作業をしていた冒険者達が不思議そうに見つめる。
ドンキホーテは叫んだ。
「みんな! 逃げろ!」
その言葉とともにドンキホーテ達の背後にある、遺跡の入り口が土煙を上げながら破壊され、中から巨大なドラゴンさえも丸呑みに出来そうな大蛇が現れた。
明るいところに出て、その大蛇の姿がよくわかる。全身の鱗は禍々しく尖っており、歯は噛み付いた相手を殺すためだけに存在しているかのように鋭く尖っていた。
瞳は黒いが白い縦筋の虹彩があり、映る者全てを射抜くほどの眼力があった。
冒険者達はその化け物を見るや否や腰を抜かして逃げ出した。よほど恐ろしかったのであろう、足がつまずくもの、転ぶ者、とにかく冒険者達は焦りに焦った。
しかしいく方向は皆同じである、皆下山をし村へと逃げているのだ。
そんな人波に逆らうようにドンキホーテ達の目印となるように誘導した人物がいた。
レーデンスだ。
「ドンキホーテ、こっちだ!」
「レーデンス!」
ドンキホーテは走りながらも安堵し、
「レーデンス、博士を頼む!」
と、博士をレーデンスの腕の中に押し付けた。博士は言われるがまま、困惑しながらレーデンスの腕の中に収まる。
レーデンスもまた戸惑いながら博士を、抱きかかえる。
「よし、じゃあ行ってくる!」
ドンキホーテはそう言い、大蛇の方に向き直る大蛇は獲物を品定めしているのか何かを探すようにあたりを未だ見回している。
太陽の光に未だ慣れていないのかもしれない、どうやら大蛇はあたりがよく見えていないようだ。
「な! まさか戦うつもりか! ドンキホーテ!」
「無茶ですよ!」
レーデンスとジェイリー博士は反対する。ジャック達も同じくと、頷いた。しかしドンキホーテは止まらない。
「ここで大蛇を止めねぇと! 被害がやばいことになるかもしれねぇだろ!」
そうドンキホーテが向かおうとした時だ。地面から突如として、ドンキホーテが見つけた物と同じ石が飛び出し、空中で静止した。
それも一つや二つではない、数え切れないほど多くの石が大蛇を取り囲むように、出没した。
その石達は、緑色の光を放射する。
「あの光は……」
ドンキホーテは呟いた。あれは大蛇を阻む緑色の光だ。さながら光の檻に閉じ込められた大蛇はどこにもいけず。ただ光の中で身をよじらせているだけだった。
「ドンキホーテ、今のうちに引くぞ! 一度村にまで戻って体制を立て直そう!」
レーデンスがそう言い、ドンキホーテを止める。ドンキホーテは大蛇が動けなくなっているのを確認すると。「わかった」と言い。
レーデンスの先導の元、村へと戻っていった。
村と山の境まで戻ってきたドンキホーテ一行は、一旦一息をついた。ジャックと剣士の男は腰を抜かし抱えていた仲間ごと地面に倒れ込み。
ジェイリー博士は、レーデンスに礼を言いながら自分の足で立った。
「さてと」
ドンキホーテがおもむろに呟く、そしてズカズカとジャックに歩みよると、胸ぐらを掴み上げる。ジャックの体が持ち上げられ宙に浮かんだ。
「さあて、いろいろと話してもらおうか! ジャックさんよォ〜!」
「く、苦しい、話す! 話すよ一切合切全部!」
その言葉を聞くとドンキホーテは掴んだ胸ぐらを離し地面に落とす、咳き込むジャック。その様子を見てレーデンスが言った。
「ドンキホーテ、私もお前に聞きたいことがある、いったいあの大蛇はなんなのだ?」
「ああ、多分リヴァイアサンってやつだ、こいつらが封印を解きやがった、誰かの指令でな!」
「……頭が痛くなってきたな」
レーデンスは手のひらを額に当てる。リヴァイアサンといえば伝説の魔物ではないか。
とにかく話を聞く必要があるとドンキホーテとレーデンスそしてジェイリー博士はジャック達の説明に耳を傾けた。
「俺たちも知らなかったんだあんな化け物が出でくるなんて!」
剣士の男が咳き込むジャックの代わりに言う。魔術師の男も同調し頷いた。しかしドンキホーテはイラつきながら返す。
「そんな言い訳が俺は聞きたいんじゃあねぇんだ! どこの誰に依頼されて、こんなことをやったんだ! 言え!」
ジャックはドンキホーテの怒号に「ヒイ」と情けない声を上げながら、必死に真相を話した。
「デイル博士だよ! デイル博士! 俺たちにあの紫の石を取ってくるように頼んだんだ!」
その言葉を信じられるほどドンキホーテ達は単純ではなかった。
「オイオイオイ! 何言ってやがる! 適当こいてんじゃねえぞ!」
「そうです、私もデイル博士のことならよく知っています! そんなことを画策する人じゃあ、ありません! 第一にあの広大な空間は私と冒険者さん、えとドンキホーテさんでいいんでしたっけ?」
ジェイリー博士の問いにドンキホーテは頷く。そういえば名乗っていない。
「とにかくドンキホーテさんと私が初めて見つけた場所なのです! 第一回調査以来、博士と私は常に共に行動していました! アリバイはあるはずです!」
ジェイリー博士はそう締めくくった。
「私もたしかに、デイル博士が不審なことをしている、ところを見たわけではない……すまないが信じられないな」
レーデンスもまた、ジェイリー博士の証言からデイル博士を疑おうとはしなかった。
「そ、そんなことは言ってもよ、博士あんたは本当にあの男の動きを四六時中監視していたわけじゃないだろう! 本当に頼まれたんだよ! 王都エポロで先週さぁ!」
「たしかに、先週、王都エポロにいた期間はありましたが……」
「なあ、そうだろうだから信じてくれよ、デイル博士が犯人なんだよ!」
ジェイリー博士に必死にすがりつくジャック、その様子を見てドンキホーテとレーデンスはもしかして強ち嘘を言っているのではないのではないかと言う思いを抱いた。
しかし、そんな縋り付くジャックにトドメを刺すようにある人物に声をかけられる。
「私がどうかしましたか?」
声をかけたのはデイル博士だった。
「でたぁ! こいつ犯人です!」
ジャックが指をさした。
「犯人?」
そんなジャックの言葉に戸惑いを見せるデイル博士。
「なんのことですか、今の状況で遊んでいる余裕はないはずですが」
疑いのかけられている、デイル博士は堂々としてそう言う。
「……どういうこった?」
ドンキホーテが困惑を言語化する。レーデンスも同じく頭の中に疑問符を浮かべる。
なぜデイル博士は姿を現したのか
仮に犯人だとするならば、こんなに堂々と活動している筈がない。
「博士なぜここに?」
レーデンスは少しでも疑問をなくそうと質問をし始める。
「なぜって、あなた達の姿が見えないからですよ、探しにきたんです。今この村に逃げてきた冒険者達を集めて大蛇の対策会議を開こうしているところです。
幸いなぜか大蛇は今降りてこようとしていませんからね。さああなた方も一緒に広場に行きましょう」
デイル博士の言っていることはもっともだ。こうして犯人探しをするよりも大蛇対策をした方がいいのではないか。
犯人がわからない。そもそもいるかどうかすらわからない今どっちを優先すべきなのか。
「これではっきりしましたね、こんな風に堂々と犯人が現れますか?」
たしかにデイル博士に動揺の気配はない、ジェイリー博士のいう通りだ。しかしジャックは食い下がる。
「に、偽物だよ、偽物!」
「この後に及んで! ドンキホーテさん行きましょう!」
ジェイリー博士はそう提案する。レーデンスもその意見に賛同しかけたその時。
「オラァ!!!」
「ブベラァ!!!」
ドンキホーテがデイル博士を殴り飛ばした。
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