第7話 見知らぬ場所へ
ドンキホーテ達は冒険者一行は、特に問題もなくオーロ村に到着した。
オーロ村に着くなり馬車から降りたドンキホーテとレーデンスそして他の冒険者達は村長から歓迎を受ける。
「ようこそ、おいでくださいました! 冒険者の方々! そしてジェイリー博士!」
冒険者達を先導してきた女性の博士ジェイリーはそう呼ばれると、村長と握手を交わす、そして冒険者集団の方を見ると言った。
「村長さん、お出迎えありがとうございます。冒険者の皆さん! 私についてきてください!」
指示通り冒険者の一団はジェイリー博士についていく。ドンキホーテは観光気分で村を歩きながら見渡す。
どうやら新しく遺跡が見つかったこともあり、この村では祭りが開かれているようで、様々な出店が広がっていた。
そして香でも炊かれているのか独特な甘ったるい匂いもした。
ドンキホーテは察する。
――なるほどなぁ、ここにくる冒険者たちに品物買わせようって作戦か、商魂あるなぁ。この変な匂いの香も村の特産品なのなかなぁ
どうやらこの村の人々は、そう言う訳もあってか、調査には乗り気らしい。
ドンキホーテ達冒険者はそんな出店達を通り過ぎて、村の中心にある広場に案内された。
広場に見えるは一人の人物。その人物は冒険者達が広場に集まりきったのを確認すると声を上げた。
「ようこそ冒険者みなさん、改めて自己紹介と今回の仕事の説明をさせていただきたい。私の名前はデイル博士、遺跡調査の所謂リーダーをやらせてもらっている者です」
白髪に、細い目の物腰の柔らかそうな中年の男性は、そのまま説明を続けた。
「皆さんを先導してくれたのは私の研究仲間であるジェイリー博士、私たちは先週起こった地震の影響で、発見された遺跡の調査を行なっております」
そこからの説明は大体、依頼を受けた時の説明と似通ったものだった。
第一回目の調査時に遺跡の中の魔物を掃討し終え、今回、つまり第二回目は遺跡の本格的な調査と周辺に何か発掘物がないか、発掘作業をしたいとの事だった。
冒険者の仕事は発掘作業の手伝い兼、もし魔物が現れた時のための護衛だ。
デイル博士はだいたい説明し終えるとこう続けた。
「では、早速、調査の方に向かいたいと思います。ああそうだ、その前に注意事項を、もし遺物を見つけたら、私かジェイリー博士にご一報ください、もし珍しい物でしたら、報酬金を増加します」
こうして冒険者達一団は、遺跡調査に向かった。
冒険者達はデイル博士とジェイリー博士に連れられて、オーロ村の近くの山、デーメルト山を登る。
するとしばらく歩いているうちに例の遺跡と思しきものが見え始める。
山の斜面が崩れ落ち、そこだけまるで広場のようになっている、そして特に目を引くのは人工物と思わしき、四角い入り口だ。
その入り口はトンネルを作るように山の中をくり抜いて作られており、崩落を防ぐためか、四角の石材で補強をされていた。
この中におそらく遺跡が存在するのだろう。
「皆さん、お疲れ様です、ここが例の遺跡です」
デイル博士は冒険者達を引き連れ、例の遺跡の前まで到着すると、そう話し始める。
「私たちの考古学者の間では、正式な名前ではないのですが、俗にオーロ遺跡と呼んでいます。さあ、みなさん第一次調査の時に置きっぱなしだったスコップやツルハシがあるので、それを使って発掘作業を進めてください、範囲は私たちが指定しますので」
その号令とともに冒険者達は、近くに野ざらしで置いてあった。スコップやツルハシを持ち。デイル博士とジェイリー博士が指定した範囲内で発掘作業を始めた。
ドンキホーテとレーデンスもそれに続く。
「レーデンス、ここは手分けしようぜ! 先にいいもん見つけた方が勝ちな!」
子供っぽい提案にレーデンスは微笑した、しかし競争をするからには本気で挑みたいレーデンスはそう思った。
「いいだろう、どちらが速いか勝負だ!」
レーデンスは、久々に仕事が楽しく感じられた。何故だろうか、いやよそう考えるのは、レーデンスはただこの気持ちに従い仕事を楽しむことにした。
そうして、午前の発掘作業が始まった。
あたりでスコップで土を掘る作業や、ツルハシで何かを叩く音が聞こえる中ドンキホーテは、無我夢中であちこちを掘り続けていた。
「ふう……」
一旦息を吐き、自分の掘った穴を見渡す。随分掘ったもんだとドンキホーテ自分で感心した。
それに普段から荷物持ちや、朝早くからのトレーニングで体力がついたのが幸いして不思議にも疲れは未だ感じない。
しかし成果らしい成果は挙げてはいなかった。見つけたものといえば、なんだか分からない綺麗な石ころ一つだけ。
「よし、まだまだいけるな!」
まだまだ終われないと、ドンキホーテは穴掘りを再開しようとした、その時だ。
「ちょっと! ここは指定した範囲外ですよ! 冒険者さん!」
――この声は確かジェイリー博士だ
とドンキホーテは思い、顔を見上げると美しい赤色の髪をなびかせる、ジェイリー博士がドンキホーテを傾斜の上から見下ろしていた。
博士の注意を受けドンキホーテは無我夢中で掘り過ぎていたことに気がつく。
掘っては次の場所に移動する、ということを繰り返していたらいつのまにか範囲外に出て行ってしまったのだ。
「あれ?! すいません博士、夢中で掘ってたら、いつのまにか範囲外に行っちまってました」
一応この依頼の依頼主だからという理由で、丁寧なつもりの語調でドンキホーテ言う。
「大丈夫です。間違いは誰にでもあることですから、というかそれを監視するために私たちがいるので。ところで何か珍しいものでも見つけましたか?」
快く許してくれたジェイリー博士に対してドンキホーテはホッとして「そういえば」と先程見つけた綺麗な石ころを、腰についたポーチから取り出す。
そしてジェイリー博士が見やすいように掲げた。
「これなんか、珍しい石なんじゃないっすかね?」
ジェイリー博士はドンキホーテの石をよく見るために傾斜から降りて近づいて来ようとする。しかしそれは危険な行為だ。ドンキホーテが叫ぶ。
「あ、博士、危ないっすよ! 俺そこらへん穴を掘りまくってるんで!」
「え?」
その忠告虚しくジェイリー博士は、ドンキホーテが掘った穴の中に、滑り落ちてしまう。地面が傾斜と言うことや草木が生い茂っていることもあってジェイリー博士は気づかなかったのだろう。
「きゃあ!」
ドンキホーテの掘った穴は存外深かった、軽く五メートルはある。
ドンキホーテは罪悪感もあって急いで穴の中を覗く。
「大丈夫っすか?! 博士!」
すると穴の中には無様に横たわるジェイリー博士がいた。ジェイリー博士は痛がりながら「わ、私は大丈夫です……」と大丈夫じゃなさそうな雰囲気を醸し出す。
「今、行くから待っててくださいっす!」
ドンキホーテは博士を助けるために穴に降りる。それはもう滑らないように慎重に、慎重に。
そして穴の底の付近まで来ると、もう慎重にならなくてもいいや、と言わんばかりにドンキホーテは飛び降りた。
それがまずかった。
飛び降り、穴の底に着地した瞬間、まるで蟻地獄のように底が抜けて土と一緒にドンキホーテとジェイリー博士を飲み込んだ。
「ぎゃああ! なんでそうなるんだ!」
ドンキホーテの痛恨の叫びは誰にも届かなかった。
ドンキホーテとジェイリー博士は叫び声をあげながら何故かトンネルのようになっている地中を滑り落ちる。
そして、そのトンネルをついにドンキホーテ達は穴の中から抜けた。最初ドンキホーテがトンネルから抜ける。そして石造りの床に思い切り尻から着地をした。
「いてて……」
ドンキホーテが自分の尻をさすっているとさらに上からジェイリー博士が落ちてくる。
「きゃあ!」
「ぐえー」
ドンキホーテは間抜けな声をあげながらジェイリー博士の下敷きになる。
「あ、あ! ごめんなさい冒険者さん!」
急いでジェイリー博士は、ドンキホーテの、上から退き、頭を下げて謝った。
「良いっすよ、別に俺、闘気を使えない割に頑丈ってよく言われるんで、ほら怪我ないっす」
「良かった……」
ジェイリー博士はホッと息を撫で下ろした。
「ところで、博士。ここどこなんすかね……」
するとジェイリー博士は「待ってください」と腰のポーチから魔力で点火する、小さな「魔法ランタン」を取り出し、辺りを照らした。
ドンキホーテは辺りを見回す。
石造りの床に石造りの壁でできた正方形の部屋のように感じる。目線の先には木製の両開き扉があり、ドンキホーテ達が抜けてきた穴の部分は壁が剥げていた。
おそらく穴を作った主がいるはずだ、それは魔物だろうとドンキホーテは推測した。その証拠にこの部屋の隅に巨大な骨がある。
見た所、食われた残骸というより老衰か病かで死んで骨になったというのが正しいのではないか、そう思わせる骨の残り方にドンキホーテはある考えに思い至る。
「こいつが俺たちの抜けてきたトンネルを作った張本人か……? ハハーン、こいつの巣と俺の掘った穴がたまたま、繋がっちまったわけだ」
「そうと考えるのが自然でしょう……もしくは他に、主人がまだいるかもしれません」
ジェイリー博士はその骨に、恐れを抱きながらも冷静に言った。
ドンキホーテは改めて見渡す、自分達が落ちてきた穴から戻るということはできなさそうだ見た所登れる高さではない。
登れてたしても、ジェイリー博士の言う通り別に穴を作った主人がいるのならば、穴に戻るのは危険すぎる。
「ここでじっとしていても仕方ありません出口を探しましょう」
ジェイリー博士はそう提案した。
「博士、じっとしていた方がいいんじゃねえか? 捜索隊がきてくれるかもしれねぇしよう」
ドンキホーテの言葉にジェイリー博士は言い淀むが、こうも言い返した。
「冒険者さん、これはもしかしたらチャンスかもしれないんです……」
「チャンス?」
「この石造りの部屋、おそらく奇跡的に遺跡の中に繋がったのでしょう、私達がは前回の調査の限り、こんな部屋見つかりませんでした」
「つまり……?」
「もしかしたら大発見があるかもしれないんですよ! 見つかっていないものが見つかるかも!」
その言葉にドンキホーテはロマンを覚える、大発見、その言葉にどうもこの男は弱かった。
「そりゃ良い! よっしゃ出口を探すついでにいっちょ冒険と行くのも悪くねぇかもな!」
ドンキホーテはジェイリー博士の野心に同調し共にこの部屋から出ることを決意した。早速ドンキホーテは立ち上がり、木製の両開きのドアに手をかける。
「そーっとあけるぜ……」
ジェイリー博士は頷く、そして扉が開かれた。
ドンキホーテ達の目の前に広がったのは広大な空間であった。
そこはどうやらなにかを祀るための場所であるようで空間の中央には祭壇があり、その上には謎の紫色の石が置かれていた。
そして辺りの壁にはびっしりと何か文字のようなものが書かれていた。それらを見た瞬間ジェイリー博士は感動のあまり口を覆う。
「冒険者さん、やっぱりですよ……やっぱり大発見でした! こんな広い空間、前回の調査では見つけていません!」
ジェイリーはドンキホーテの横をすり抜け近くの壁による。
「あ、おい博士あぶねぇぞ! まだ魔物がいるかもしれねぇ!」
「大丈夫ですよ冒険者さん! もし魔物がいたら私の懐にあるお守りが知らせてくれます!」
ジェイリーは胸元からその例のお守りを見せる、それは金属でできた十字架だ。ドンキホーテはそれに見覚えがあった。「敵意感知の十字架」かなり高価なものだ。
敵意を感知すると震えて、危険を知らせてくれると言う優れものである。ドンキホーテは感心した。
「はぇーやっぱり学者つーのは儲かるんだなぁ」
お守りが振動していないということは敵がいないと言うことだ。安全が保たれているのを見て、ドンキホーテはジェイリー博士の後に続く。
「凄い! 凄いです!」
ジェイリー博士は魔法ランタンで周囲を照らしながら古代文字を見る。
「なんて書いてあるんだ? 博士?」
「詳しくはわかりませんが、「危険」とか「封印」とかそう言う単語がちらほら見かけます」
「よくわかるなぁ」
「ええ、オーロ遺跡は、所謂、古代セスティマス文明の物だと、第一次調査で判明していましたから。あ! もう一つわかる単語を見つけました!」
ドンキホーテは興味深げに聞く。
「博士、なんだい?」
博士はドンキホーテに向き直り言う。
「「リヴァイアサン」です!」
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