陰キャのキミと私のおはなし

菜都

Prologue

土曜日。

朝を知らせる太陽の光が私の部屋の一角にあるベッドを差す。

まだ寝たいのに…と不快な気持ちで、寝返りをうつ。

体温を感じ、ふと目を開ける。


あぁ、キミか。

スースーと寝息と共にゆっくりと体が上下に揺れている。


「ふふっ」


自然と口角があがっていることに気がつき、慌てて真顔になる。

そっと布団をかけなおして、キミの背中に手を置いた。

その手からトクントクンと正常に心臓がなっているのが伝わる。


「生きてる…」

「そりゃ、生きてるよ」

「え、起きてたの」


慌てて手を戻して太陽も気にせず、先ほどの向きに戻る。

い、いつから起きてたの?…恥ずかしい。

激しく鳴る心臓に手をあて、収まれと念じていると


「ひゃっ」


横腹から手が回ってきた。


「な、なにすんの!」

「んー抱いてる」

「だ、抱いてるって…」


呆れて何も言えない私の後ろにいるキミは私の旦那さん。


背中には旦那さんの顔が埋もれている。

そんな体が互いに密着している今、私の心臓は鳴り止まない。

どれだけ深呼吸をしても、いっこうに収まる気配がない。


「あれ、?」

「どうした?」

「私より心臓鳴ってない?」

「知らない」


い、いや、めちゃめちゃ鳴っているんですけど。

私の旦那さんは嘘をつくのが苦手みたいだ。


あと、背中で声を発せられると…色々、困る。うん。


「嘘…好きだから毎日ドキドキしてる」


私の旦那さんは素直みたいだ。

旦那さんの言葉に、本日2度目。

自然と口角があがっているのに気づく。


こんなに幸せな日々を送れているのは、過去の自分いるから。

瞼を閉じて、10年前を思い出す。


私たちが出逢った日。

あれは、中学3年生の時だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る