七日目 クラスの人気者と一緒に夕食を食べた。

 それから数分も立たないうちに、白華がキッチンの棚から取り出したであろう、少し大きめの木のトレイを持ってこちらへやってくる。

 こちらへやってくると、二人分の料理が少し小さめな机の上にならび始める。

 そういえばさっき寝てしまう前、手料理がダークマター化したものや某ジャイなんちゃらシチュー的な混沌としたあれみたいなことになってしまうラブコメのよく分からない謎現象が発生しないか少し心配していたが、流石白華といったところであろうか。作ってくれた手料理はあっさりそんな心配を忘れさせてくれるほどの美味しそうな匂いと共に、きれいな色と形を持って自分の目の前で並んでいる。

 そんな美味しそうな料理の内容は、ご飯に味噌汁、焼き鮭にそれと青菜の胡麻和え。

 健康的な和食で、とても美味しそうだと思いました!まる!

「美味しそうだ」

 気づいたら無意識に言ってしまったが、別に無意識に言わなくても後から言うつもりだったし、感謝の言葉は大切だと子供の頃から親に言われていたから、別にそれをうやむやにする必要はない。大事だよ感謝って。いやマジで。


「ありがとうございます。冷めないうちにお食べください」

「それもそうだな」

 そんな会話を交わし、白華は向かい側へと座った。今回は隣じゃないんですね。まぁ机も狭いからぜひともそうして欲しいところではあるが...これ以上はいいや。

 そんなことを思いながらお腹がすき始めた俺はこの夕食が出てくるまでのすべての工程に関わった人、物、食材に感謝し手を合わせる。皆さん本当に毎日ありがとうございます。


「「いただきます」」

 息ピッタリ。こういう時ってまるで夫婦とか茶化されるらしいな。俺的には結構どうでも良い話だが、この前のお昼時間に昼食をとろうとクラスから出ようとしたらすごくウェイウェイしてる連中らが息ピッタリの同グループの男女に対してしていた所をみた。

 まぁ俺たちは夫婦とか以前に許嫁同士だが。

 そんな事を思いつつ、最初は焼き魚に手をつける。


「美味しい」

 いや、お世辞とかではなく、本当に美味しいのだ。

 例えこの料理を食べるのがレポーターだったとしても美味しいくらいしか言えなくなる位、美味しく感じる。てか例えなくても実際ここに語彙力が喪失している人がいるし。言わずもがな俺のことだけど。あ、あとこの料理は誰だろうと絶っ対に渡さないんだからねっ!


「朱兎くん。すっごく申し訳ないんですけど思ったことがあります」

 そんな事を思っていると白華が少し申し訳無さそうな表情でこちらに呼びかける。

「ん、どしたん?」

「こんな事を言って申し訳ないのですが本当に意外でした」

「何が?」

「ちゃんと料理しているのにキッチンがすごく綺麗で家庭的なところです」

「あーその事か。そりゃそうだろ。じゃなきゃ俺は一人暮らししていない」


 はっきり言って料理ができないのに一人暮らしをするのは自殺行為だ。

 せめて最低限の家事はできないと、数ヶ月もしない内に悲惨な状況になる。

 だけどその悲惨な状況が一年持ったらそれはそれですごいよなって思う。まぁ俺はしたくもないけど。

「まぁそりゃそうですけど...ですけど朱兎くんって料理できなさそうって思ってました」

「まぁ外観も外観だからな。仕方ないかも。とりあえずは善処する」

「はぁ。善処すると言う人に限ってなんにもしないんですよねぇ」

「わかる」

「じゃあ何故言ったんですか...まぁいいです朱兎くん。明日デートに行きましょう。」

「断るっ!」

「速攻ですかそうですかありがとうございますというわけで行きましょう」

「話聞いていたかおい」

 これ以上問い詰めていても白華は明日は絶対に俺を連れて外出すると思うので反論するだけ無駄だ。というわけで諦めてそれに従うしかあるまい。


べつに白華と一緒にいることは嫌じゃない。だけど白華はクラスの人気者だからバレたら噂されそうだから個人的には目立ちたくないし嫌なんだよなぁ。もうこれは杞憂であることを願うしかない。



 その後も白華と色々会話したりして食事を楽しんだ。

 もちろん今回の食事が楽しかった事と美味しかった事は言うまでもあるまい。

 こうして、長かった一日は終わりにさしかかっていく――――。

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした。あ、そうだ。朱兎くん」

「なんだ?」












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