僕と魔王と彼女に似た誰かの話

夜々予肆

暴露事件

暴露事件

 こんにちは。大人気高校生ライトノベル作家の斉藤本太郎さいとうぽんたろうです。一応、念のため名乗っておきましたが、まぁまさか僕を知らない人なんていませんよね。僕の事を知らない人なんてこの世には誰一人として存在しないはずです。


 言い過ぎました。日本国内には誰一人として存在しないはずです。


 これも言い過ぎか。じゃあ、日本国内でライトノベルを読んでいる人の中には誰一人として存在しないはずです。


 まだ言い過ぎ? ……いやもうこのくらいでいいでしょ。そもそもこんな僕の知名度がどうのこうのというのは本題じゃないですし、ラノベ作家としてはかなり知名度があることは自覚してますから。むしろ謙遜している方だと思います。


 ……すみません。自分で言っておきながらなんですけど、やっぱり自信が無くなってきたので訂正させて下さい。ラノベのラブコメが好きな方なら僕の事をご存じかと思います。多分。デビュー当時「作者は現役中学生!」って話題になってましたし。でもあれもほんのちょっとの期間だけだったか。いやいや「ぼかつー」の斉藤さんですよ! 知りません!? 知らないですか!? 知らないか……。


 なんだか実は大人気でもなんでもない気がしてきました。ていうか僕を知っている人っています? もしもーし! 誰かいたら返事してくださーい!


 しばらく待ってみましたが、返事は返ってきませんでした。人気ひとけは全くありませんでした。恐らく人気にんきもないんでしょうね。ぐすん。


 そんなくだらない茶番はどうでもいいとして、やっぱり何度考え直しても僕の事を知らない人の方が多い感じがしてくるし書かないと本題に入れないので、本題の前にまず僕とは何なのかについて書いていこうと思います。何だか哲学的ですね。僕とは何なのか。我思う、ゆえに我あり。


 僕こと斉藤本太郎はだった3年前「僕と彼女の2年間ツーイヤーズ」という作品を執筆し、苗素なえそラノベ文庫新人賞大賞を受賞しました。ちなみに当時僕は中1の13歳でしたが、これは史上最年少での大賞受賞とのことです。総評では編集者や人気作家の方からこのような事を言われました。


「この作品はとにかくリアリティーが凄まじい。フィクションであることを理解して読んでいるのにも関わらずフィクションであることを脳が拒否し続けた」

「フィクションが現実を越えることが無いと言われ続けてきたが、ついにその日がやって来た。この作品は、現実よりも現実だ」

「現実よりも現実的。超現実とはまさにこのことなのだろうなと思いました」


 夕暮れ時に電線に整列しているカラスの群れよろしく同じような総評を見て僕はこう思いました。


「そりゃそうでしょ。だってこれノンフィクションなんだもん」と。


 これは出版社含め、今までどこにも流していない情報です。僕が今まで1人でずっと厳重に封印してきたとんでもない爆弾です。実は「ぼかつー」含めて僕が今まで書いてきた作品は全て実体験をほぼそのまま文字に書き起こしたものなんです(人物名とかはちょろっと変えてますが)。それを完全フィクションのライトノベルとして今まで書いて出してきました。「俺と女教師と禁断の館」も「パフェークト委員長」も全部です。


 もう一度はっきりと言います。僕の著作は全部ノンフィクション、すなわちエッセイです。それをフィクションだと言ってライトノベルとして出していました。主人公は名前が変わっただけの僕で、登場人物は全て僕のリアルな関係者です。先生も、クラスメイトも、全員です。実際に美人な先生を手玉に取って色々やりましたし、勉強を教えてもらうためクラス委員長にパフェを奢り続けました。事実は小説より奇なりとよく言いますが、まさしくそれです。僕の周りでは小さな頃からラノベラブコメみたいな事が実際にとんでもない頻度で起こりまくっているんです。


 そんなとんでもない事態が現在進行形でとんでもなく起こりまくっている中で当時の僕はふと思いました。


「あれ? これ小説にして出せば売れるんじゃね?」と。


 言いたいことはわかりますよ。そもそも最初からエッセイで出せばいいよねって。ですがおバカな中学生だった当時の僕はエッセイなんてものがあるのだと全く知らなかったので勢いで幼馴染との情熱的で幻想的な思い出の日々を文字に書き起こしてライトノベルの新人賞に応募してしまいました。結果は前述の通りです。


 そこからが大変でした。編集者の方に「中1でこんな話作れるの凄いよ! 天才だよ! 今すぐデビューしよう!」って言われながら何度も握手されましたからね。人気作家の方からも「俺には書けないわ。次元が違う」とベタ褒めされました。とても「すみません。実はこれ本当にあった話なんです。だから次元が違うのはまさしくその通りなんです」なんて言える空気じゃありませんでした。


 当然むちゃくちゃ焦りました。小説家としてやっていけるスキルなんて端から無いんですから。試しに一度、話をゼロから考えて書いてみましたがすぐ挫折しました。


 ですが幸い現実が上手い具合に二転三転してくれたお陰でラノベ作家として今までやってこられました。ですが幼馴染とあんな形で別れる事にならなくても……とは思いました。皆さん「ぼかつー」3巻のラスト、いやそれだけではなく、「俺と女教師と禁断の館」と「パフェークト委員長」の結末も非常に衝撃的であり、驚愕しましたよね? 一番驚愕したのは僕自身ですからね。なぜあのようなことになってしまったのか、僕が一番知りたい。どうしてああなったんだ。マジで。


 さて、今までこの文を読んできて「なぜ作家としてやっていけなくなるような秘密をわざわざ自ら告白したのか?」と思う方もいると思います。


 はい。ここからが本題です。この為に僕はライトノベル作家として絶対に明かせない秘密を明かしたんです。


 先日、僕はいつものように学校でラブコメ的展開に飲み込まれました。これはいつものことなんですが、いつものことじゃないことが起こったんです。


 改めて言いますが、僕の作品は全て僕の周りで実際に起こったことをほぼそのまま書いています。つまりはエッセイです。


 それを踏まえた上で、次に進んで下さい。一応いつも通り小説っぽく書いていますが、実際に起こった話を忠実に書いています。


 ノンフィクションをフィクションだと偽っていた僕ですが、今回はノンフィクションをしっかりとノンフィクションだと主張させて頂きます。


 この話はノンフィクションです。


「斉藤本太郎、魔王を名乗る幼女と出会う」

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