第20話 理解を理解しない奴の戯言

 君と同じ道を歩く。


 この世界を生きるという上で、それは当たり前の事なんだと思った。


 だから、僕は歩き方を真似て、歩幅を合わせて……


 一生懸命、置いていかれない様に歩いた。



 涼しく、その道を歩く君の横で、僕は汗だくで……目に熊を作るほどに疲れ果てて……沼にとられる、足を懸命に動かすように……必死で動かしていた。


 タイミングは覚えてはいないのだけど……


 あぁ……僕が君と同じ道を歩くことは簡単じゃないんだと理解した。


 同時に……あぁ、僕が異常なんだと理解した。


 理解したところで何もできないことを理解した。



 世界を生きるという事を理解しろ。


 人生という道を歩く方法を理解しろ。



 君は自分の夢を叶える方法を理解する。


 僕は自分の戯言いいわけを正当化できる方法を理解する。



 僕はこの世界を理解できていないこと理解する。


 僕は君を理解できていないことを理解する。


 


 僕は君の努力を理解しない……


 君は同じ努力のできない僕を理解しない……



 僕はそんな君の言葉を理解しない……


 君はそんな僕の戯言を理解しない……



 僕はその君の道の歩き方が理解できない……


 君は僕が道を歩けない意味が理解できない……



 互いに互いの理解が理解できない……



 理解できないものはこの世界に存在しないに等しい。


 だから、世界は君は僕を理解できない。

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