第6話 プライドを無くした者の戯言




 いつからだろう……何時の間にか後ろで崩れ落ちたそいつを引き起こそうと思わなくなったの……




 昔は……人前にでる時は、いつもそいつに守らせていた。


 この世界の僕の在り方……


 きっと僕よりもずっとこの世界に溶け込んでくれると思っていた。


 この世界の僕は……そいつが示す僕を演じ続けた。


 僕は周囲の人間と同じだ……むしろ僕は誰かの役に立っているんだ。


 そいつに言われて、そう演じていた時は……そう本当に錯覚していたのかもしれない。



 でも……無理なんだよ。


 人の産まれ持つスペックってのはさ……


 あんたらが思ってるより神様ってのは不公平なんだぜ?


 言い訳……甘え……努力不足……


 知ってるよ……そんな言葉を理解できない程には馬鹿じゃない。


 今の僕を象徴する、とても都合の良い言葉だろうさ。


 あんたが僕を否定する、とても都合の良い言葉だろうさ。


 それができない人間が言うのも……説得力ないだろうけど、


 努力するのって……才能の一つだぜ、多分。


 

 やり方……その後の価値がわかってこその努力……って案外難しい。


 持たぬ者は心がすぐに折れてしまう。



 いい加減気がつけよ……


 あんたにとって呼吸するように簡単な事が僕には難しい。


 なぜできない?そんな不思議そうな顔で見ないでくれ……


 あんたの側はいつだって息苦しい……いつだって窒息しそうなんだ。


 もう、同じ土俵に上げようとするのはやめてくれ……


 あいつは、もう立ち上がることを辞めたんだ……辞めさせたんだ。


 ……皆、僕以上にわかっているのだろう……理解しているのだろう?


 ……今の僕には嫌って程見えるんだ……あいつが見せようとしなかった本当の姿が……


 

 ……あんたの普通が僕には難しい。


 ……あんたの日常は僕には地獄。


 ……僕の苦言はあんたには戯言。


 僕は、無能……知っている。



 そう、受け入れたとき……後ろで崩れ落ちたそれは……塵となり消えた。


 今まで有難うございました。


 後は、そんな君の頑張りが無駄にならないよう、君に笑われないよう……


 ゆっくり僕が壊れていく。

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