第20話

「これっ!」

リョウがシャーペンと消しゴムを投げてよこす.

さすがにルーズリーフは手渡ししてくれた.

「サンキュ~.」


そういえば,

学校で先生から大学ノートを準備しろって言われて,

何だか分からなくて,

ルーズリーフとバインダー持って行った事思い出した.


横並びに座って,ライブ授業を見る.

学校のリモート画面と違って,塾生の画面は映らない.

大きく塾講師とホワイトボードが見える.


ルーも受けてんのかな.

俺の紹介も何もなく,物凄いスピードで講義が進行する.

微積の進化系だった.

知らない事を知るって面白い.


リョウも画面見ながら真剣だ.

こちらをちらりとも見ない.


これ週4で学校終わりにやってるのかと思うと…

ゲームしてる場合じゃねぇなとか.


講義は終了したけれど,

リョウは問題解いてたから,

静かに身支度して部屋を出ようとした.


「ドア出て右が玄関.

ごめんね,こんな感じで.

帰り気をつけて.」

背中から声がした.


「おぉ.

今日はありがと.

リョウの母さんに挨拶して帰るわ.」

と言うと,

「そんなのいいのに.」

とボソッと言う声が聞こえた.


ドア閉めて,玄関と反対側へ進む.

ドアをノックして

『すみません.』

小声で言うと,

「はい~.」

と声がした.


向こう側からドアが開いて,

リョウのお母さんだった.

青いワンピースが印象的だ.

あれ?

いつもうちの母さんどんな格好だっけと思い…

いつもズボンだったよなと思った.


『今日は,おいとまします.

お邪魔しました.

リョウさんは,まだ講義が続くようなので…

よろしくお伝えください.』


『お家どの辺り?』

と聞かれたので,

『丸野です.』

と答えた.


『1時間位かからない?送って行きましょうか?』

と言われたので,

『それほどはかからないかなと…

自転車で来たので大丈夫です.有難うございます.』

と礼をして,廊下を進むと,

リョウの母さんがお見送りしてくれた.

『車に気をつけてね.』

と言われたので,またふと見て,

リョウはお母さん似だなぁと思った.


玄関に行くと,俺の靴は揃っていたけれど,

俺が揃えたのか,リョウの母さんが揃えたのか

気になった.

流れ作業ですると記憶が曖昧で良くないなぁと思った.


礼をして,玄関を後にする.


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