第18話

あぁ肝心なことしていない…


「なぁ…

俺たち肝心なことしてない…

手洗いしてなくね?」


リョウが

気が付いて…目が泳いだ.


「あまり,あちこち触ってないから,

アウト寄りのセーフで…

こっち.」

リョウが部屋のドア開けて,玄関に向かって歩いて行った.


マンションにしては,廊下が長い.

白で統一された空間で,すっきりしていた.


「廊下長いね.」


「何もないでしょ.

母の趣味.忙しいから,何も置かない.

掃除がしやすいんだって.

僕は壁にミニカーとか置きたい.」

振り返ってリョウの目が笑った.


とりあえず,

廊下に服は投げ捨てておかないようにしようと思った.


何だか良い香りのするハンドソープだった.

入っているボトルもお洒落で,

多分,うちみたいに外見と中身が別ではない…


「何か,いい香りするやつだね.」


「分かんない.

僕は選定にノータッチだから.」

と,そっけなくリョウが言った.


リョウの部屋に戻ると,

「時間まだあるね.

何か飲む?

氷入れていい?」


「お構いなく.

リョウが飲むのと一緒でいいよ.」

とやり取りをして,リョウが部屋から出ていった.


少し夕方に良い風が入るようになったけれど,

昼下がりは,まだまだ暑い.


黒い勉強机に,本棚,ベッド,白いテーブル.

どんな本が並んでるのか気になった.

勝手に見てたら良くないかなとか,

正直に興味があってと言って見てるか,

悩んでたら,リョウがコップ2つ持って戻って来た.


「どっかにお盆があるはずなんだけど…

はい,どうぞ.」

白いテーブルの上に置いた.


「ありがと.」

リョウが直交するように座った.


「ねぇ,バス停でユウとハヤトくんと女の子いたよね.

髪がフワフワで可愛かった.あの子が妹さん?」

リョウが聞く.


「うん,そう.

ルカ.

可愛かったよ.物凄く.」


「そっか.

中2のさ,3学期始まる辺りから,

塾は,もう高校入試に向けて進むから,

何だか,きっと,

あの笑顔の子たちの隣通って行けないなって思って.

多分,自分のメンタルやられそうって思って,

遠回りして見えないように塾行ってたんだ.

だから,あの笑顔も時間も続いてるものだとばっかり…

勝手に思ってた.」


あの笑顔や時間は続かなかったんだ.

とか,

ルカを覚えてくれてる人がいたんだ.

とか,

何だか巻き込んじゃって悪かったな.

とか,言いたいことが山ほどあったのに,

出てくるのは,涙と嗚咽だった.


リョウは何も言わずに,

俺の肩に手を置いてくれてた.

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