第8話

分散登校するから,学校が早目に始まった.

ハヤトは後半組.

ルーとカックンは別のクラスだから,まぁどうでもいい.

てか,知らん.

リモートも許可されているらしいから,生徒はまばら.

来なくても欠席扱いにはならんらしいし.

午前中だけ.


あっ.

あいつは…ん~.

ハヤトが言ってた,聖火リレーの…

…誰だっけ汗


「あ~…その…

オリンピック感動した.

聖火リレーお疲れ.」


何か驚いた顔して,悩ましげで苦そうな顔して…


ふき出した…

「…ユウくん,ありがと.

あんまり言わなさそうな感想だったから驚いただけ.

聞いた時,イラついてたようだし,記憶に残ってた事も驚いたっていうか…」

「あ…

ごめん.ん~…

失礼ついでに,名前分かんなくて…」

「ふぅん…リョウだよ.」

「気分悪くさせて悪い.」

「いや,お互い制服に名字縫い込んでるっしょ.

でも,距離詰めてくるんだと思って.

純粋に,ちょっとイメージ違うなって思っただけだから.

え~っと,3秒黙って静かに出来る?」

「3秒?何で3秒?出来るけど.」

「じゃあいくよ.」


じゃあいくよ…?

リョウが,左手でマスクをおろして,右手で1・2・3って数えて,

左手を離した.

マスクがシュンって戻っていった.


「僕,こんな人.」

ってリョウが言いながら,多分見えない口元も笑顔だった.


これ,自分もマスク外して顔さらさないといけない流れなんだけれど…

固まってしまった.ちょっと青ざめていたかもしれない.


「いい.同じ事してって言ってるんじゃないから.

大丈夫.僕が知って欲しいと思ったからしただけ.」

リョウがまた笑った.

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