第六話
6:
「ふう」
またベンチに戻って、兄を待つ。
五分……十分。
遅い。
「なにやってるのかなぁ?」
携帯電話も兄が持っているトートバックの中だし……。
近くに居るのかもしれない。
探してみよう。
「燕さんがいなくなったって本当か!」
遊園地の入り口。
龍之介の携帯電話かの連絡を受けた秦太郎が居た。
遊園地の外に居たらしい。
「どこにもおらへんねん」
「ちゃんと探したのか!」
「……いやまぁ、うん」
妙に目線を泳がせる龍之介。
溶けてしまうからと、龍之介からもらったソフトクリームを食べている番太が一言。
「お手洗いとかでしたら、少し待ってたほうが良かったのでは?」
番太と同じように、ソフトクリームをぱくついている源之助が頷く。
思い出したように、龍之介。
「あ……」
「馬鹿野郎………」
秦太郎が、うんざり気味に頭を抱えた。
「こっちだ」
龍之介が両手にジュースを持ちながら、方向をあごでしゃくる。
「おう」
龍之介を先頭に、秦太郎、番太と源之助が続いた。
燕とはぐれたベンチまで、龍之介と秦太郎、番太と源之助が到着する。
が、燕の姿は見当たらなかった。
「どこいったんだほんと……」
龍之介がぼやく。
秦太郎がしきりに辺りを見回すが、燕の姿は見つからない様子。
「あ――」
龍之介がひらめいたように声を上げる。
「さらわ、れた?」
「おいおい……」
龍之介の突飛した発言に、秦太郎がツッコんだ。
「だがよ、先日の事もある」
先日とは、以前スーパーの中で龍之介と燕がはぐれた際に、暴走族にさらわれた時の事。
「俺達にゃあ敵が多いだろう」
「…………ううむ」
張り詰めた空気が満たされていく中で、秦太郎が難しい顔をする。
「それはもうないかもしれんが……、この前の事も、まさかで起こったしなぁ……」
ぶつぶつとつぶやきながらも腑に落ちない秦太郎。
「俺探してくる!」
そう言うなり、ベンチの上にジュースを置いて龍之介が走り去って行った。
以前、腕を組んで考え込む秦太郎。
そんな中、秦太郎の背後で番太と源之助がひそひそと。
「少しだけでも待ってみるって選択肢はねーのかな?」
「いやー、龍のアニキは待つ、って事ができねーし」
「それもそうか」
「だよなぁ」
番太と源之助が、そろって頷く。
「秦のアニキ」
番太が考え込んでいる秦太郎へ声をかけた。
源之助が続けて、
「とりあえず、迷子センターへ行きやしょうか? 入り口にありやしたぜ」
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