悪兄!!

石黒陣也

第一巻!!

プロローグ

    プロローグ つばめ


 私は『家族』を知らない。


 知らないという言い方は、少しおかしいかも知れないけれど。

 私には家族がいない。


 『施設』――俗に言う孤児院で育った私には、家族がいない。


 ただし、他人の持っている家族ならば知っている。


 なんでも、父親はお風呂上りにパンツ一丁と濡れたタオルを首にかけて、ビールを飲んでTVの野球を観るとか。

 母親は習い事をたくさんやらせるくせに、さらに「勉強しなさい!」と理不尽に言ってくるとか。


 兄弟姉妹なんかは、勝手に人の物を使ったり、からかってくるからすごくうるさくて煩わしくて……兄は兄、姉は姉、自分は自分とやたら個々であることを強調する。


 ――けっこう似てるのにね。


 そういった愚痴なのかネタ話なのかを、聞いたことが度々あった。

 気楽でいいよねーって。

 だけど――

 

 私は親兄弟なんて知らない。分からない。他所を見て、ぼんやり思うだけ。


  居ないものに、どうやって共感せねばならないのか。


  施設暮らしの私には、ないものだと思っていた――血のつながった家族と縁がないものと思っていた。――でも。


 私に『兄』がいたと言う事を先日、初めて知った。


 どうやら父親は私が生まれる五、六年くらい前に、私の母親でない相手との間に、私より先に『兄』を生んでいたのだという――腹違いの兄妹。というやつだ。


 その兄が、私という妹がいると言う事を知って、施設にやってきた。


「俺が引き取る、こいつは俺が守っていく」

 

 初めて会あった、『兄』は――

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