悪兄!!
石黒陣也
第一巻!!
プロローグ
プロローグ つばめ
私は『家族』を知らない。
知らないという言い方は、少しおかしいかも知れないけれど。
私には家族がいない。
『施設』――俗に言う孤児院で育った私には、家族がいない。
ただし、他人の持っている家族ならば知っている。
なんでも、父親はお風呂上りにパンツ一丁と濡れたタオルを首にかけて、ビールを飲んでTVの野球を観るとか。
母親は習い事をたくさんやらせるくせに、さらに「勉強しなさい!」と理不尽に言ってくるとか。
兄弟姉妹なんかは、勝手に人の物を使ったり、からかってくるからすごくうるさくて煩わしくて……兄は兄、姉は姉、自分は自分とやたら個々であることを強調する。
――けっこう似てるのにね。
そういった愚痴なのかネタ話なのかを、聞いたことが度々あった。
気楽でいいよねーって。
だけど――
私は親兄弟なんて知らない。分からない。他所を見て、ぼんやり思うだけ。
居ないものに、どうやって共感せねばならないのか。
施設暮らしの私には、ないものだと思っていた――血のつながった家族と縁がないものと思っていた。――でも。
私に『兄』がいたと言う事を先日、初めて知った。
どうやら父親は私が生まれる五、六年くらい前に、私の母親でない相手との間に、私より先に『兄』を生んでいたのだという――腹違いの兄妹。というやつだ。
その兄が、私という妹がいると言う事を知って、施設にやってきた。
「俺が引き取る、こいつは俺が守っていく」
初めて会あった、『兄』は――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます