随筆録
カリーナ
第1話 渇望
嫌な気持ちになった時、自分以外が全員幸せに見えてならなかった
他の人にだって、多かれ少なかれ悩みはある
人間誰しも悩んで、戦いながら生きていると頭はではわかっていた
自分が不幸だとは思わない
五体満足の体
飢えを知らず、寒さだってない
けれどどんなにストーブで部屋を温めても心が温かくなることは無かった
ぽっかり穴が空いたような
孤独
世界のみんなはとっても幸せで、私はそこから取り残されてる
置いていかれている、という不安
みんなの手の中にはたくさんの幸福があって
私には無い
何にも、無い
空っぽの心
人を愛するにはまず自分を愛さなければならないのだと思う
自分に余裕が無いと人を心から愛すことなんかできない
そう思う
自分を愛することも出来ない
だから人を愛せない
誰のことも信じてない
そのくせ傷つけられると悲しむ
だから、傷つかないためもっと人を信じなくなる
私は弱虫だ
誰も信じない
誰も愛さない
そのくせ人から愛されたいと思う
息ができない
苦しい
辛い
生きたくないのに死にたくもない
完璧じゃない世界が嫌い
完璧じゃない私が嫌い
人から必要とされるには相応の努力が必要
その努力もしないで何が必要とされたい、だ
愛を向けられても信じられないくせに
私はあなたを渇望した
踊りを見て泣くのは初めてだった
ステージの上のあなたは輝いていた
あなたはいつだって、自分の輝ける場所を知っていて、そこに立っていた
自分のしたいことを、自分の成すべきことを分かっていて、それがどんなに困難なことだろうと実行した
そうしてキラキラ輝いて生きていた
私から見るあなたはあまりにも美しく、力強かった
こんなふうになりたいと思った
こんなふうに生きれなくても、こんなふうに踊りたいと思った
周りに人がいようとも、自分がどんな状況でも、誰よりも輝いていた
誰よりも人生を楽しんでいた
そんな彼女が私の隣で踊っていることが、なによりの誇りだった
だからすごく悔しかった
突然いなくなった時は
何も教えてくれない
いつも1人で考えて、決める
聞き返した時にはもう決断は終わってる
全然会えなくなって遠くに行くんだと知った時は、涙が出た
その、あまりに淡々とした報告を見ながら、泣いた
全力で応援しようと決めた
その夢が、目標がどんなに高くても、それが彼女の決めた道なら全力で応援しようと
どんな道だっていい
絶対に応援する
それが私たちの信頼だったし、絆だったし、友情だった
そっか、これが信じるってことだったんだ
5年ぶりに会った彼女はやっぱり輝いていた
違うステージで、他の誰よりも
一級品の笑顔で、世界を魅了していた
暗い観客席で良かったと思う
私はやっぱり、泣きそうだったから
いつも彼女の背中を追っかけて頑張っていた
いつかあんなふうになりたい、と
あの時よりほんの少し前に進んだ私は、更に、もっと前にいる彼女を見て思う
私の渇望は終わらない
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