第13話 白星高校!




スカウト活動をしないといけなかったが、気があまりにも重すぎた。



貰った資料からある程度精査してみたその結果、良いのか悪いのか気になった選手が全員バラバラのチームにいた。




他に注目したのはチームの成績だった。


俺がまず他のスカウトに勝つには、強いチームにスカウトに行くことじゃない。


まずは大会で全然勝てていない弱小のチームから実際に練習、出来れば試合を見に行きたい。



他のスカウトはもちろん強いチームから見に行くだろうから、俺は逆に弱いチームから行くことにした。



試合の日程は天見さんにお願いすることにした。

チームの代表か監督に電話してもらい試合を見たいので試合の日程を教えてくださいという旨を伝えてもらう。



ちゃんと白星高校の監督からの電話なら教えてくれるだろうし、スカウトに行った時に白星高校の名前を出せば少しはスムーズに話が進むと思ってそれだけはお願いした。



俺はスカウトに行く前に、白星高校の練習を見に行った。

天見さんは春休みから監督として新たな1歩を踏み出していた。


これから天見さんのことを監督と呼ぶタイミングを考えていたが、監督と呼ぶのはとりあえず俺が高校1年になってからにしようと思った。




特別にグランドが一望できる屋上へ案内された。

屋上はドラマとかではよく上がったりできるが、危険が伴うため封鎖されているところがほとんどだろう。



屋上まで上がると、そこからまた靴に履き替えて屋上から練習を見ることにした。



白星の女子野球部はハーフパンツタイプのユニフォームみたいだ。

女の子が履くような短パンを少し長くしたような感じで、結構生地は厚めみたいだ。

ハーフパンツは足の怪我が多いため、長めのストッキングと、軽量で且つ伸縮性がありスライディングでも膝を痛めない両膝のサポーター。



ユニフォームのデザインは白星という高校らしく、ユニフォームの所々に星がデザインされており、基本白ベースのユニフォームで星が黄色となっている。


スパイクも白色でワンポイントのラインの色は基本的に黄色だが、人によって女子野球はオシャレの一環としてスパイクは結構種類がある。

白ベースであればラインの色は何でもいいが、ハートマークだったり星マークだったりかなり安くオーダーメイド出来るらしい。



男子高校野球ではグローブの色とグローブの紐の色が規定で決まっている。

商標の大きさ等も決まっておりあんまり自由はないが、女子野球はそういう規定がほとんどない。



金やミラーコートなど太陽が反射するグローブは流石にダメ。

ミラーコートはどうやったらそんなグローブが出来るかは頭の悪い俺には分からない、




グランドでキャッチボールしてる俺の先輩になるであろう選手たちは色とりどりのグローブを使っている。



グローブの色はカラフルなのは俺も結構賛成である。

その人のラッキーカラーや好きな色を使えるだけで結構テンションも上がるし、モチベーションの向上に繋がるのであればド派手にしてもいいと俺は思っている。




まず、キャッチボールを見ていた。

キビキビと動いている人もいれば、かなりダラダラとキャッチボールをしている人もいる。



天見さんは春休みの間は積極的に指導するつもりは無さそうだった。

まず、選手同士の派閥もあるだうし、一人一人の性格を見誤って間違った指導を最初からしてしまうと、早くも監督に対しての信頼を落とすことになってしまう。



俺も言いたいことが色々とあったが、まだ中学生の俺が口を挟むことは無い。



キャッチボールの後は、結構長めの守備練習、その後に打撃練習、その間に個別の守備練習や投球練習を天見さんが見ていた。

やっぱり監督1人では中々全員の指導をするのは大変だろう。

だからこそ、一日の練習である程度指導する選手を絞って教えているみたいだった。




「あ、そういえば特待生5人いるって言ってたけど、あのバラバラのユニフォームを着ている選手達かな?」




ハーフパンツじゃなくて普通のズボンの選手やスカート型のユニフォームの選手もいた。



スカート型のユニフォームはとても人気があるが、スライディングした時にお尻を擦りやすかったり、お尻のラインがはっきりしすぎるため、薄手のパンツユニホームと併用されている。




「うーん。悪くは無いけど…。うーん。」




全員ざっとしか見れていないため、この選手のここがいいとかそういう細かい所まではまだだが、突出している選手はあんまりいなそうだった。



強いて挙げるとするなら、


真っ青なウインドブレーカーを着ている外野手、多分特待生の1人だろう。

あの選手はさっきの守備練習でライト、センター、レフトをローテーションで守っており、どこのポジションでもかなり上手く、1度もエラーをしていなかった。


「えっと…名前は。」



瀧上舞(たきがみまい)。


外野守備はもう高校生レベルで肩の強さはそこそこだが、送球のコントロールは抜群であり、1大会で補殺4で大会記録を更新した。


基本的には守備型の選手だが打撃にも光るものがあり、三振が多いのが欠点だがパワーがあるため長打にも期待できる。



ざっくりとした選手紹介だが、まぁ納得出来た。

打撃がよくなれば守備のうまさからレギュラーになるのも時間の問題だろう。



他には新1年には右投手と左投手の2人。


右投手のほうはややサイドスロー気味でどちらかというと技巧派。

あんまりスピードは感じないけど、キャッチャーのミットがそんなに動いてないことから多分コントロールはいいのだろう。

変化球はここからじゃあんまりわからない。



左投手の方は本格的なオーバースローで投げ方はかなり豪快で、世間でよく言われる投げっぷりがいいというやつだ。

スピードはそこそこ出ているようだが、コントロールがイマイチそうだ。

変化球も投げているが、変化球のコントロールは更に悪そうに見える。




「ん?あの人も投手か?」



スカート型のユニフォームを着ているやや小柄の選手がブルペンに入った。

特待生5人のうちまさかの投手3人。

ピックアップした選手で来てくれた選手が野手2人、投手3人というバランスの悪さが出ている。



だが、その小柄のピッチャーは左のアンダースローだった。

女子のアンダースローは結構珍しく、まずアンダースロー自体が難しいためスピードやコントロールが通用するレベルにないことが多い。


この投手はスピードもそこそこ出てるし、コントロールも悪くない、この完成度のアンダースローなら結構通用すると思った。



海崎詩音(かいざきしおん)。


アンダースローから少し浮き上がるストレートを武器にして、変則投手特有の打ち取るピッチングじゃなくどんどん三振を狙いに行く強気のピッチングが持ち味。


身長の高い選手を目の敵にしており、身長が小さいことをかなりのコンプレックスにしている。

投手としての実力はあるが、性格は負けず嫌いで責任感もありハートも強い。

だが、あまり協調性がないのか、試合でもところ構わず味方に楯突いたりする場面も見られた。



「なるほど。小さいから自分を大きく見せようとして態度まで大きくなったパターンか。」




協調性がないのは好ましいことでは無い。ただピッチャーはキャッチャーとバッテリーを組んではいるが、ピッチャーマウンドというのは相手との戦いでもあり自分との戦いでもある。

つまり、投手というのは投げるというプレーに関しては誰からも助けては貰えない。


ストライクが入らない時、打たれている時、バックに声掛けをしてもらっても、助けてもらえる訳では無い。



性格に難があっても、マウンド上で精神的に潰れないピッチャーの方が俺は結局チームに貢献出来ると思っていた。




ざっと練習を見て、俺のやらないといけないことが浮き彫りになった。




このチームはやたら投手が多い。




2年、3年合わせて15人で、1年が特待生5人で合わせて20人。


1年生は一般生徒も何人が入るだろうが、多くても25人くらいにしかならないだろう。


今のところグランドにいるのが18人で練習に来ていないのが2人。



今日ブルペンで投球していた投手が6人で残りが野手だとして12人になるかな?


休みの2人は流石に野手だと思うが…。





「スカウトはまず野手からだ。最悪、全員野手でもいい。」




俺は白星高校の練習が終わったのを確認し、とりあえず帰宅することにした。





「とりあえず連絡してもらったから、明日試合を見に行ってみるか…。」





俺は遂にスカウト活動を始めることになった。



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