第29話 出撃・アルマフィー防衛軍
~決戦当日~
ここはフーバの前線基地。
その日は帝国から使者が来た。
『魔王城』出現と共に同時攻撃をする。
そう言ってきたのだ。
もちろん反対はしない。
従順に従って帝国を安心させる。
そして帝国兵は帰っていった。
・フーバ王
「サリウス、グランデの方はどうなってる?」
・サリウス
「向こうも同じ様に使者が来ています。
こちらと同じ事を伝えに来たようですね。」
エリシャとの通信で情報の共有を行う。
・フーバ王
「ふむ、浩二殿の言った通りだな。」
・リンネ
「本当に大したものね。」
フーバ防衛軍は準備万端だ。
魔王城出現と共に動く。
~グランデ基地~
・グランデ王
「ご苦労、共に魔王城を攻略しよう。」
帝国の使者にそう告げるグランデ王。
その様子に安堵の表情を浮かべる使者。
こちらも上手く行ったようだ。
・使者
「ありがとうございます。
ではその様に伝えてまいります。」
帝国の使者は返っていった。
・リーム
「予想通りの展開ね。」
・グランデ王
「そうだな、先手はこちらが取った。
そう考えて良いだろう。」
・エリシャ
「まずは魔物との対戦だね。
リーム、しっかり指示してね。」
エリシャとリームはお互いに頷く。
グランデ防衛軍も準備万端だ。
~決戦場予定地~
ここにはエルデンの兵士達が隠れている。
少し開けた場所に医療本部。
丘の上に作戦本部を置くつもりだ。
この丘は台形の様な形をしている。
魔王城方面が緩やかに上がっており作戦本部からは決戦場が良く見えるが、向こうからは見えない様になっていた。
・コーン
「素晴らしい地形ですな。」
・エミリア
「ええ、これで勝率が跳ね上がるわ。
スイに感謝しなきゃね。」
スイがこの場所を教えていたのだ。
後は魔物をここにおびき寄せれば良い。
フーバとグランデの進軍速度次第だ。
・コーン
「皆の者、頼んだぞ。」
後は祈るだけだ。
最初の作戦で勝負が決まる。
そう言っても良い程、重要な場面だ。
・エミリア
「どうか、私達に神の祝福を。」
エミリアは祈った。
無事にこの世界を守れますようにと。
~帝国城~
・???
「それで、状況は?」
帝国の会議室に魔族が集まる。
この世界に居る魔族全てだ。
・魔族
「魔王バルキュラス様。
全ては順調に進んでおります。
物資の不足分も調達完了しました。
いつでも搬入開始できます。」
・バルキュラス
「そうか、、、では始めよ。
その前にひとつ訂正だ。
断じて順調ではないぞ。
魔獣ペンテラスが2頭倒された。
そして魔将軍も2名。
これのどこが順調と言える?」
魔王の言葉にタジタジの魔族。
その時、魔王が報告した魔族を睨んだ。
刹那、魔族は弾け飛ぶ。
・バルキュラス
「次、報告しろ。」
・魔族
「は、、、はい。
帝国勇者だった人間は無事に孵化。
記憶の混乱もなく順調です。
すぐにでも戦力と出来るかと。」
恐る恐る報告する魔族。
魔王はこれに満足したらしい。
・バルキュラス
「良くやった、では搬入時に投入しろ。
物資の搬入が始まるまで誘導。
その後は好きに暴れてこいと言ってやれ。」
殺されなかった魔族はほっと胸を撫でおろす。
・バルキュラス
「次、勇者の動向。」
・魔族
「はい、フーバとグランデ共に軍に合流。
それぞれの軍で戦う様子。
エルデンの勇者は自身の国を殲滅。
その後の動きは不明。
我が国の巫女も奪われました。
巫女の生死は不明です。」
バルキュラスが殺気を放つ。
・バルキュラス
「不明点が多いな。」
会議室の全員が覚悟した。
報告を行った魔族は死ぬ。
・???
「恐れながら魔王バルキュラス様。
これ以上、同胞を減らすのはどうかと。
今後の士気にも関わりますゆえ。
なにとぞ怒りを収め下さい。」
勇敢に魔王の前に出て来る魔族。
・バルキュラス
「オリテウス、、、我に意見するか?」
魔王は怒りの矛先を変える。
しかしその先は何も起こらない。
・バルキュラス
「ふ、、、貴様の言う事が正しい。
良いだろう、貴様に免じて許してやる。
だが今回限りだ。
次は無いと思え。」
魔族の会議が終わる。
最後に魔王はオリテウスに命令する。
・バルキュラス
「今回は想定外の事が起き過ぎている。
保険は常にしておくものだ。
牢に居るあいつを連れてこい。」
魔王が切り札を用意する。
この存在がその後を左右する。
・バルキュラス
「よし、『転送城』起動!
人間を血祭りにあげろ。」
人間 vs 魔族
最後の戦いが遂に始まる。
魔王城がその姿を現す時が来た。
~魔王城出現予定地~
・「この辺で良いのか?」
・スイ
「この辺りが境界線ね。
魔力の壁が形成されているわ。
魔族にしか感知できない物ね。」
誰よりも先に魔王城出現場所に来ていた。
・「スイは魔王城の構造を知っているのか?」
・スイ
「向こうで説明されたわ。
全てを知ってる訳じゃないけどね。
捕虜を運び来む場所は把握してる。」
今回はバレない様に潜入するのが目的だ。
だったら一番乗りするのが手っ取り早い。
ささっと入って隠れていよう。
・スイ
「しかし、大胆な事を思い付くのね。
聞いた時は驚いたわ。」
・「半分は思い付きだしな。魔王城の出現場所を聞いて搬入方法とか想像がついたからね。」
そんな話をしていると変化が訪れる。
何だ?地面が揺れている。
・スイ
「来るわ、転送の余波に気を付けて。」
地震が徐々に大きくなる。
空間が歪んでいく。
・「すげぇ光景だな。」
・スイ
「転送には相当量のエネルギーが要るの。
それこそ次元を開けるんだもの。
もう少し下がりましょう。」
空間の歪みはさらに大きくなる。
そして、、、
一瞬だった、一瞬で大きな建物が。
・「これが『魔王城』か。
なるほど城そのものだな。」
禍々しい雰囲気の城が現れる。
光る現象、一瞬で移動する物質。
まるで召喚された時みたいだ。
規模は違うけどね。
・スイ
「さぁ、急ぎましょう。
既に帝国軍が動いているはずよ。」
俺達は城の中に入っていく。
なかなか立派な城だなぁ。
~前線基地~
スイが言った通り、大地が揺れ始めた。
・フーバ王
「合図だ!全軍前進開始。
全速力でエルデン防衛軍に合流。
時間を掛けている暇はない。
ひるまず進めぇぇぇ!」
フーバ防衛軍が動き始めた。
とにかく早く進む必要がある。
先頭にはサリウスが居る。
・サリウス
「邪魔なものは僕が排除する。
僕に続けぇぇぇぇ!」
アサルトライフルを連射、木々をなぎ倒す。
軍の行進に支障が無いように道を切り開く。
お陰で軍の進行速度は予想を超えた。
・サリウス
「すぐに行きます、コーン殿。」
一方でグランデ防衛軍。
・リーム
「既に重装備部隊は合流地点に向けて進行中。
我々も向かいましょう。」
リームは進行の遅い部隊を先行させていた。
これで遅れることは無いだろう。
・グランデ王
「皆のもの聞け!
この戦いで全てが決まる。
先人の兵士達は無念の中、魔物となった。
救えるのは同じ兵士である諸君達のみだ。
命を惜しむな、前に進むのだ!
全ての魔物に、魂の救済を!」
グランデ防衛軍が動き出す。
先頭にはリームを背負ったエリシャ。
・エリシャ
「みんにゃ行くよ!
私も力を貸すから、一緒に戦おう。」
エリシャもサリウスと同じく先頭を行く。
ライトニングボウで一気に道を作る。
こちらの進行速度も予想を上回る。
両軍が合流地点に着く頃。
エルデン軍による進軍準備が完了していた。
・コーン
「総司令コーンである。
聞いたと思うが魔物は元々兵士だ。
だが躊躇する事は許さない。
考えて見て欲しい。
もしも自分が魔物になった時の事を。
守るべき国民を、自分が殺すのだ。
とても耐えられるものではないだろう?
だからこそ同じ兵士である我々の出番だ。
彼らを救うのだ!
魔物化と言う地獄から魂を救い出せ!
アルマフィー防衛軍!全軍出撃だ。」
コーンの号令で全ての軍が動き出す。
グランデ、フーバ、エルデン。
3つの軍が一つとなる。
目指すは『魔王城』
少しの迷いも感じられない。
アルマフィー防衛軍が動き始めた。
魔王城からは魔物が溢れ出している。
真っ直ぐに防衛軍に向かって。
正面衝突は避けられない。
もとい、望むところだ。
・エミリア
「敵勢力、上手く誘導出来ました。」
指令本部のある丘の上から戦況を見定める。
・リーム
「まずは上手く言ったわね。」
・エリシャ
「リーム、私も行った方がよくないか?」
エリシャは待つことにあまり慣れていない。
どちらかと言うと突撃するタイプだ。
・リーム
「これは兵士達の戦いよ。
私達は後方支援。
それに魔族が出てきた時に対処しなきゃね。」
リームがエリシャをなだめる。
・サリウス
「ここは僕に任せて。」
既にリバース装備をしているサリウス。
宣言通り誰も死なせる気はない。
・サリウス
「さぁ、始まるよ。」
遂に防衛軍と魔物が衝突する。
最前線のコーンが真っ先に切り込んだ。
・コーン
「進めぇぇぇ!」
鬼神の如き剣技が炸裂。
コーンを阻む魔物は一瞬で斬り裂かれる。
総司令が最前線で戦う。
その姿に兵士達の士気は膨れ上がる。
・兵士達
「命を惜しむなぁぁぁぁ」
凄まじい雄たけびと共に兵士が突撃する。
横に広がり戦いが繰り広げられる。
・コーン
「遠距離攻撃!
てぇぇぇぇ!」
コーンの大声が響き渡る。
その声を聴いた兵が空に魔法を放つ。
これが合図だ。
・砲撃部隊隊長
「合図確認、撃てぇぇぇぇ」
魔物の最前線より少し後ろを狙い撃つ。
その場所に無数の魔法が打ち込まれる。
弓矢も数え切れない程飛んでくる。
・砲撃部隊隊長
「魔法力を全てふり絞れ。
最後の一滴まで使い切るんだ!」
止まない魔法攻撃の雨。
終わる事のないような矢の雨。
それでも魔物はひるむことなく進む。
・コーン
「恐怖すら感じぬか、、、」
魔物は尚も増え続ける。
・コーン
「第一陣後退だ!第2陣と交代。
魔物を押し返せぇぇぇ」
2段構えの突撃。
後ろから新しい部隊がやって来る。
・第2陣隊長
「行くぞ、一気に斬りかかれぇぇ」
あえて3国の軍を混ぜた混合軍にした。
連携よりも士気を優先したのだ。
だが流石は歴戦の兵士達。
徐々に連携が決まり始める。
・リーン
「見て、エミリア。」
・エミリア
「うん。」
混合軍にしたのは彼女達だ。
元々バラバラだった戦術を一つにした。
細かい決まり事は捨てて簡単なものに。
はっきりいって博打だった。
しかし彼女たちは確信していた。
必ずうまくいくと。
そして、様々な化学変化が起き始めた。
・元グランデ兵
「フーバの、後ろだ!」
・元エルデン兵
「ここは任せろ!」
・元フーバ兵
「右を頼む。」
連携が決まる、その度に変化する。
・元フーバ兵
「足元を狙え!」
エルデン兵の魔法が魔物の足を捉える。
崩れた所にフーバ兵がトドメを刺す。
・元グランデ兵
「後ろがガラ空きだったぞ!」
グランデ兵は後ろから襲い来る魔物を阻止。
兵士達は実践の中で進化していく。
・フーバ王
「素晴らしい、、、、」
元々兵士だったフーバ王。
凄まじい連携に思わず震える。
・グランデ王
「見事な戦いだ。」
軍師だったグランデ王。
ここまでの連携は中々お目に掛かれない。
そんな戦いが繰り広げられている。
・リーム
「エリシャ、あの辺りに投下して。」
リームの指示が飛ぶ。
それに合わせてエリシャが動く。
・エミリア
「サリウス、あそこを狙って!」
エミリアの指示も飛んでいる。
リンネは救護班として医療本部で待機。
第一陣の負傷者を迎え入れている。
・リンネ
「この程度ならエリアに5秒。
あなたは20秒程エリアに居なさい。」
傷の具合で秒数を決める。
ここの回転数で勝負が決まる。
リンネは的確に指示を出していく。
・フーバ王
「次世代が着実に育っているな。」
・グランデ王
「頼もしい限りだ。
少し寂しい気もするがな。」
感傷に浸っている王達。
・リーム
「グランデ王!さぼってないでこっち来て。」
・エミリア
「フーバ王、こちらの手伝いを。」
二人の美女に怒られたオジサン二人。
お互いに笑みを浮かべつつ叫ぶ。
・グランデ王・フーバ王
「まだまだ若いもんには負けんぞ!」
二人の王は走り出した。
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