第28話 決戦前日

スイの最終試練は終わった。

結果は言うまでもないだろう。

俺達の完敗だ。


・スイ

「危なかったわ。」


涼しい顔でそう答えるスイ。

本当にそう思ってる?


・サリウス

「まるで相手にならなかった。」


肩を落とすサリウス。

自身があったんだろうな、、、


・エリシャ

「強すぎる!」


エリシャは言葉と反対の反応を示す。

キラキラした目でスイを見ている。

戦闘に関して色々聞きたいんだろうな。


エリシャが強すぎると言ったな。

俺も同意見だ。

三人がかりで全く歯が立たなかった。

恐ろしい子やで。


・スイ

「みんなには感謝してるわ。

私がどれだけ強くなったか実感できた。

これで仇が打てる。」


スイが目を閉じる。

色々と思い出しているのだろう。


・「さてと、そろそろ俺達も動こうか。

『魔王城』出現まであと3日。

それまでに合流しないとな。」


前日までに到着しなければならない。

戦術を練り合わせたいからな。

エミリアと合流して移動しよう。


・エリシャ

「ところで浩二、ちょっと聞いていい?

APが60000になってたけど。

一体どこまで上がるの?」


ドラグーンランスが4万超えだしね。

食らっても良い様に高めにしておいた。


・「ふふふ、内緒♪」


楽しみは最後の取っておきましょう。

最終戦では開放する予定です。

エリシャが聞きたそうにしていたな。

別に内緒にする必要はないんだけどね。



~魔王城攻略前線基地~


魔王城攻略最前線基地。

これは帝国が用意した場所である。

各国に準備していた為3カ所あった。

しかしエルデンは崩壊。

さらに元凶となった勇者は不参加。

結局、使われるのは2カ所だけとなった。


現在、フーバ基地に首脳陣が集まっている。

グランデのトップも訪れていた。

もちろんコーンもそこに居る。


・フーバ王

「そうか、浩二殿がな、、、」


コーンは浩二の作戦を話した。


・グランデ

「遂に彼が表立って帝国と戦うか。

これ程頼もしいことは無い。」


・リーム

「負ける気がしないわ。」


しかしコーンが告げる。

魔物との戦闘は主に兵士が行うと。


初めは反対意見が多かった。

しかし世界の真実を話した事で変化する。

兵士の無念は兵士が晴らす。

この思いが伝わったのだろう。


・フーバ

「志願兵だけで行うと言ったな。

恐らく全ての兵士達が参加するだろう。

彼等も国の為、家族の為に戦うのだ。

この戦い、負けるわけにはいかない。」


・リンネ

「サリウスが居るから大丈夫よ。」


リンネはサリウスの能力を知っている。

サリウスは回復魔法が使えるのだ。

そう、『リバボン』の魔法を。

ホントは武器の名称なのだが。


次に彼らは陣形を考える。

想定し得る限り話し合った。

妥協は許さない。

完ぺきな布陣で迎え撃つのだ。



~決戦前日~


遂に勇者たちが戻って来た。

最後の調整が行われる。


帝国軍は帝国城から出撃するらしい。


『魔王城』が現れる場所が判明した。

前線基地と帝国城の間らしい。

帝国からは挟撃する作戦だと伝えられた。


一見、見事な迎撃作戦と思える。

だがこれは俺達に見えない様にする為だな。


魔族は帝国城から魔王城に物資を搬入する時、反対側に居る俺達には見えない。

こちらには魔物が攻めて来るからな。

その間に魔族は仕事を完遂させる。

搬入完了次第、魔王城が消えるだろう。

消える前に何かしらありそうだけどね。

そうして100年に一回の厄災は終わる。

中々考えられてるじゃないか。


・グランデ王

「スイ殿はこちらの味方で宜しいか?」


俺達が連れて来たスイを見て問い掛ける王。

帝国の巫女だったんだ。

ある程度の反対は想定しておいた。

スイもその覚悟はしている。


・エミリア

「そうです、彼女も苦しんできました。

打倒魔族の為に力を貸してくれます。」


エミリアが必死にスイをフォローする。

各国の勇者も援護に回る。


・「スイなら大丈夫だ。

俺が保証する。」


一応俺も援護射撃を行う。


・フーバ王

「浩二殿が言うのだ、大丈夫だろう。」


・グランデ王

「そうだな、浩二殿が言うのなら。」


・リーム

「私は浩二を信じる。」


・リンネ

「サリウスが信じるのなら、、、」


若干一人だけ違う意見だったな。

だが、すんなりと受け入れくれた。


・スイ

「貴方の信頼度は大したものね。

改めて礼を言うわ。」


これでスイが正式に仲間となった。

完璧だな。


・「最初の戦闘は皆に任せるよ。

コーン、頼んだぞ?」


最初は魔物が攻めてくるだろう。

俺はコーンに託すことにした。

なんと彼は今回の総指揮を行うのだ。


・コーン

「機会を作ってくれた事に心からの礼を。

浩二殿、誠にありがとう。

我らアルマフィー防衛軍。

全身全霊で期待に応えようではないか。」


いつの間にそんな名称が、、、


フーバ防衛軍 フーバ王

グランデ防衛軍 グランデ王

エルデン防衛軍 エミリア姫

アマルフィー防衛軍 総司令コーン


聞くとその様な名にしたらしい。

行ってみれば防衛戦だからそうなるか。


別の世界からの侵略。

それを阻止するための戦い。

奇しくも俺のやってたゲームにそっくりだ。


それにエルデン防衛軍って、、、

まさに『EDF』じゃないですか!

何故か無駄にやる気が出てきた。


・リーム

「浩二はどの軍に着くの?

エミリアと二人でエルデン軍?

あ、スイも居るから3人か。」


俺は初戦に参加しない。

俺にはやる事があります。


・「俺はスイと共に別行動をとる。

エミリアはリームと共に戦況を見守ってくれ。

状況によって軍を動かしてほしい。」


この子達の知識は凄まじい。

流石は本の虫と言えよう。

戦術、陣形、作戦進行。

知識だけなら誰にも負けない。

二人で頑張ってもらおう。


・エミリア

「解った、リームと共に勝利へ導くわ。」


エミリアに任せれば大丈夫だ。

俺はそう信じている。


こう見えてエミリアが一番努力してきた。

「私には力がない、だから知識を付ける」

これは彼女の言葉だ。

宣言通り彼女の知識に勝てる者は居ない。

それ程に努力していた。

だからこそ任せられるんだ。


・「頼んだぞ、エミリア。」


エミリアと見つめ合う。

お互いに大きく頷いた。


・エリシャ

「んで、浩二は具体的にどうするの?

あたしが一緒に行こうか?」


エリシャが気になっているみたいだ。

一緒に来てくれると頼もしい。

だがエリシャにも仕事がある。


・「気持ちだげ受け取っておくよ。

でもエリシャにはやってほしい事がある。」


この戦い、回復が重要になるだろう。

だから今回は『ライフベンダー』を使う。



*ライフベンダー

周囲にナノマシンを散布する装置。

急速回復はしないが長時間効果が継続。

周りに居る兵士達を癒し続けてくれる。



・「この装置を危険だと感じた場所に投下してくれ、そうすれば周囲に居る兵士達の傷が癒えるはずだ。

リームとエミリアの指示に従えばいい。

後は魔族が出てきた時だな。

魔族はエリシャとサリウスで倒してくれ。」


最近、俺の能力が解って来たんだ。

ゲームの能力を引き出せる物だと思ってた。

だけどそれだけじゃない。

あまりにも融通が利きすぎるのだ。


最初に気付いたのはエリシャがリームを連れて飛んで来た時、ゲームではそんな事は不可能。

そしてレイダーの武器は本人しか扱えない。

しかし実際にエリシャに渡す事が出来る。

スイのモードチェンジもそうだ。

ゲームは戦闘中に切り替える事など出来ない。

以上の事から導き出された。


俺の能力はゲームの力を引き出す事じゃない。

もっと別の何かだと。


・エリシャ

「これ何?丸くて大きな物だね。」


エリシャに使い方を説明する。

レイダーは武器を3種類。

更にビークルを装備できる。

2枠をライフベンダーに設定した。

これにより10基程用意できる。

戦局を左右するだろう。

使う個所などはエミリア達に任せる。


・サリウス

「僕も範囲回復弾を撃つよ。

絶対に誰も死なせない。」


サリウスも俺の意図を理解してくれた。

頼りになるね。


・「俺とスイは『魔王城』に潜入する。

転送する為に捉えられた人が居るはずだ。

それを救出しようと思う。

その為に芝居をしてまでマークを外した。

俺が居なくても不審に思われないだろう。」


あいつらの計画の全てを壊すんだ。

何一つ、渡してなんかやらねぇ。


・エミリア

「そうだったのね、、、。」


・グランデ王

「そう言えば、ロドルフはどうした?」


グランデ王が聞いて来た。

ずっと気になってたんだろうな。


・「ロドルフには戦後の事を頼んだ。

消耗した後に直ぐ救援が出来るようにな。

この戦いでどの程度疲弊するか解らない。

だから備えておこうと思ってな。」


・フーバ王

「そこまで先を見越すか。

浩二殿には敵いませんな。」


これで作戦は全てかな。

魔物は兵士達が戦う。

エリシャとサリウスはサポート。

魔族が出てきたら迎撃に参加。


俺とスイは『魔王城』に潜入。

捕虜の救出後に参戦する。


最後はロドルフによる救援物資の投入。


・「何か質問はあるか?」


その後は細かい調整が入った。

各々の意見が出されて纏められていく。


さて、遂にこの時が来たな。

振り返ってみれば色んな事があったな。


長かったような、、、

短かったような、、、


エミリアと出会い俺は自分を取り戻せた。

そして、『生きたい』と思う事が出来た。


それだけで十分だ。


エミリアには感謝しかない。

借りは必ず返そう。


この世界を救って見せる。

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