第5話 救援要請
厄災2波を退けて1週間。
あれからゲートの報告はない。
平和な日々が続いていた。
・コーン
「さぁ、浩二殿続けますぞ。」
相変わらず毎日コーンにやられています。
こいつ手加減ってものを知らないな。
生傷がドンドン増えていく。
毎日が地獄の日々です。
第2波で見せた重爆撃機フォボス。
あれのお陰で兵士達皆に感謝された。
コーンは俺を尊敬してくれている程だ。
あれから稽古での攻撃が激しくなった。
何故に?
エミリア曰く、尊敬の念が高くなったからこそ全力でぶつかるのが礼儀だと思っているんじゃないかと。
迷惑な話である。
とは言えコーンのお陰で対人戦に強くなれたのも事実。
そこは感謝しておこう。
そんな俺がロドルフに呼ばれたのは昼頃だった。
ボロボロの身体を引きずって部屋に向かう。
・ロドルフ
「浩二殿、今日は相談があって来てもらった。
というか、大丈夫か?」
大丈夫な訳ないだろ?
ご自慢の兵士長に本気で攻撃されてるんだから。
・「まぁ、いつもの事だ。」
カッコよく返してみた。
鼻血を出しながら言うセリフじゃないな。
・ロドルフ
「だ、、、大丈夫なら良いのだが。
私からコーンに言っておこうか?
程々にせよと。」
・「是非お願いします。」
マッハで喰い付いた。
恥ずかしいとか言ってられん。
死活問題だからな。
・ロドルフ
「そ、そうか、なら後で言っておこう。」
やった、これで地獄の日々から解放だ。
最初からロドルフに頼んでおけばよかった。
・「んで、頼み事って何かな?
今なら気分が良いから頑張っちゃうよ。」
・ロドルフ
「浩二殿は『グランデ』と言う国をご存知か?」
・「『グランデ』?ちょっと解らない。
何かヒントとか無い?」
・ロドルフ
「『始まりの魔獣』の素材を送った国だ。」
・「あ~、ネコミミ美女の国だ。
その国がどうした?」
・ロドルフ
「ネコミミ美女?エミリアでは不満か?
まぁいい、、、いや余りよくない。
先にそっちを聞かなければならないか?」
王様がブツブツ言ってらっしゃる。
どうしたものか。
・ロドルフ
「問い詰める事が増えてしまった。
エミリアにもっと頑張って貰うしかないか?」
自分の世界に入っている王。
暫くそっとしておくか。
数分後、、、
・ロドルフ
「まぁ、その問題は後回しにしよう。
それで、その『グランデ』から使者が来た。
力を貸して欲しいとの事だ。」
成る程、救援要請か。
でも何でこの国なんだろう?
一番弱い国だと思うのだが。
・ロドルフ
「使者から直接聞いた方が居だろう。
入ってまいれ。」
奥の部屋から一人の女性が入ってくる。
ん~、何か見たことあるな。
・女性
「お久しぶりです浩二様。
『グランデ』の巫女リームでございます。」
あ~、召喚の時に居たな。
ネコミミに目を奪われたのでうろ覚えです。
何だかすみません。
・リーム
「我が国に第2波のゲートが出現しました。
しかし我が国の勇者エリシャは出撃が出来ません。
『始まりの魔獣』との戦いで負傷を追ったままです。
どうか、浩二様のお力をお貸しください。」
エリシャさんって最初一番強かったよね?
負けてしまったのか?
・ルドルフ
「本来であれば自国の事は自国で解決する。
浩二殿が断っても問題はない。」
まぁ、そうなるわな。
・リーム
「今回、救援要請に従ってくださるのであれば報酬は相当なものをご用意いたします。
どうか、お力をお貸しください。」
・ロドルフ
「如何いたそう?」
俺に聞いてくるロドルフ。
・「ん~、良いよ。」
軽く答える俺。
・リーム
「本当でございますか?」
・ロドルフ
「またそんな簡単に、、、」
少し落胆する王。
交渉次第では国益に繋がる取引が出来そうな場面だったしね。まぁまぁ良いじゃないですか。
・リーム
「報酬は、何をお求めでしょうか?」
恐る恐る聞いてくるリーム。
ロドルフの目が輝き出した。
でもごめんね。
俺は交渉とか駆け引きをするつもりはない。
・「その前に、聞かせて欲しい。
何故俺を頼った?
召喚の時に知ってるだろう?
俺の能力値。」
ここが一番聞きたかった。
だってみんなに笑われたぐらいだし。
あの時の悔しさは忘れてない。
・リーム
「答えは実績です。」
・「実績?」
・リーム
「どの国でも『始まりの魔獣』は終了しました。
しかし討伐をしたのはこの国だけです。
歴史上、この国だけと言った方が良いでしょう。
どの国も甚大な被害の元なんとか退けたと言うのが現実の話になってきます。我が国もエルデンからもたらされた素材のお陰で素晴らしい武具が作られました。
そのお陰でエリシャも一命をとりとめました。」
そっか、素材を送っておいてよかった。
・リーム
「我が国が掴んでいる情報。
これも報酬の一つとして献上致します。」
お、、、交渉モードに入ったな。
リームさん中々のやり手と見た。
・ロドルフ
「申し出を受けよう。」
ロドルフも駆け引きに入ったな。
こうなると腹の探り合いが始まるな。
時間が掛かりそうだ。
・「この件は俺に一任して貰って良いかな?」
ロドルフは驚きながら俺を見る。
素人の俺は引っ込んでて欲しい所かな。
政治とか難しそうだもんなぁ~。
・ロドルフ
「ふむ、ならば全権を任せよう。
正直ワシも駆け引きは嫌いだ。
どれくらい引き出してやろうとか考えるのは好きじゃない。浩二殿に任せた。」
途中から王の威厳とか無視しやがった。
まぁ、こういう所が好きなんだけどね。
兵士と一緒に畑を耕してるような王様だし。
村人とお茶をすすりながら笑う王様って斬新だわ。
・「と言う訳で、全権が俺に移りました。
では、俺の言う事を聞いて貰おうかな。」
・リーム
「わ、、、わかりました。」
服の胸元をギュッと掴みながらビクビクしているリームさん。俺なんか変なこと言ったかな?
・「まず、敬語は辞めてラフに行こう。
その方が話しやすいしさ。
あと詳しい話は移動しながら話さない?」
・リーム
「救援に来て下さるのですか?」
・「敬語じゃなくなったらね。」
・リーム
「あ、、、」
王の方を見るリーム。
ロドルフは大きく頷く。
そして一度深呼吸をするリーム。
・リーム
「一緒に、来てくれるの?」
上目使いは反則だろ。
一瞬で心を撃ち抜かれるわ。
そんな俺に咳ばらいを食らわせてくるロドルフ、解ってますって。
・「エリシャだけは俺に優しくしてくれた。
あの時は嬉しかった、だから力になるよ。」
話は決まった。
ロドルフの報酬の話は?って顔は無視してその後の事を話し合う。
夕方には出発する事になった。
・「既にゲートが出現して3日目だったね。
急いで行かなきゃいけないだろ?」
俺はカッコよく言い放った。
では話をまとめよう。
ゲートが出現して直ぐに国を出たリーム。
この国に着くまで馬車で移動。
食料も水も最小限に抑えて馬の負担を軽減。
その結果、何とか3日で辿り着いたらしい。
・リーム
「この子達には無理をさせてしまった。
流石に帰りは無理でしょう。
何とかこの国の馬を貸して貰えないかな?」
・エミリア
「もちろん良いわよ。」
何故かエミリアも同行する事となった。
危険だと思うのだが、、、
あの時、王は条件を出してきた。
・ロドルフ
「私からの条件は一つ。
エミリアを同行させる事。
浩二殿、エミリアから離れないでくれ。」
心配なら同行させなきゃいいと思うが。
・エミリア
「お父様がくれたチャンス。
モノにして見せますわ。
ネコミミ美女とやらには負けません。」
エミリアがなにやらブツブツ言っている。
そういう所は王様そっくりだな。
まぁ、やる気満々なのは良い事だ。
・リーム
「では、急ぎ向かいましょう。」
馬車は進んで行く。
目指すは開拓の国『グランデ』
~馬車内~
・リーム
「実は各国にも救援要請は出してあるの。」
馬車で色々話しているうちにそんな話題に。
・エミリア
「そうなの?」
・「いや、普通そうだろ?
だってどの国も救援要請に応じてくれるか解らないんだから、各国に送るのは当然じゃないかな?」
・エミリア
「まぁ、、、確かに。
だったら実績とか言ってたのも嘘なの?」
盗み聞きしてたのか。
その辺がリームの交渉術なんじゃないの?
・リーム
「交渉するための一手と言うか。
相手を持ち上げた方が頼みやすいと言うか。」
正直に話してくるリーム。
・リーム
「でもエリシャも私もこの国に来たのは間違いじゃなかったと思ってる。国の人たちはみんな反対だったけどね。」
いまさらそんな爆弾を落とされてもね。
2人以外みんな反対だなんて、、、
・リーム
「本当は「バンガード」帝国に救援を依頼するのが当たり前なの。100年前もそうだった。
『始まりの魔獣』で打撃を受けた国は「バンガード」にすがる事になる。全ての国は「バンガード」に救援依頼を出すのが普通。莫大な依頼料、お金が無ければ多くの女性を連れて行くのがいつもの歴史なの。」
・「そうなのか?」
・リーム
「私の国の歴史書にそう記されているわ。
国を救う為に仕方のない事。
それを知ったエリシャは激怒したわ。
そして始まりの魔獣に立ち向かった。
彼女のお陰で追い返す事に成功した。
でも、魔獣は最後に村を消滅させようと魔法を放ったの。彼女は村人を救うために魔法に飛び込んでいったわ。」
リームが泣きながら話している。
・リーム
「誰もが死んだと思った。
でも、あなた方のくれた素材で作った防具のお陰で何とか助かったの。
本当にありがとう。」
エミリアももらい泣きしている。
・リーム
「この実績があったから私はこの国に交渉すると決めた。周りの反対も押し切る事が出来たわ。」
涙を流しながらも笑顔でこちらを見る。
この国に来るまでの護衛は一人だけ。
この人も必死だったんだろうな。
・リーム
「もう一度言うわ。
救援に応じてくれてありがとう。」
一行を乗せた馬車はグランデへと突き進む。
厄災第2波までに間に合う様に。
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