第4話 救世主
ゲートが出現して約1週間。
現在は簡易的に作られた前線基地に居る。
既にゲートは真っ黒になっていた。
いつヒビが入ってもおかしくないと言う。
部隊の最前線にはコーンが行っている筈だ。
んじゃ、俺も準備しますかね。
・エミリア
「嫌です、私も浩二と共に行くの。」
そんな緊迫した雰囲気の最前線。
現在王様が困っています。
何故ならエミリアの我儘が炸裂中なのです。
・エルデン王・ロドルフ
「しかしだな、、、危ないだろう?
一国の姫なんだから大人しくしていてくれ。」
・エミリア
「大人しいだけの姫は嫌なのです。
私も国民の為に戦いたい。
兵士が血を流しているのに、王族である私達が先頭に立たなくてどうするのですか。
士気を上げる為にも先頭に立って指揮する事が重要なのではありませんか?」
う~む、一理ある。
確かに兵士からしたら王族が一緒に命を懸けて戦ってくれた方が士気は上がるだろうな。
自分達だけが命がけなのではない。
そう思わせた方がやる気は出るだろうね。
・ロドルフ
「ぬぅ、ならば私が出よう。」
・エミリア
「ダメです、お父様は王なのですよ?
万が一、王に死なれたら国が滅びます。
ですので、唯一の王族である私が出るのです。」
唯一の王家の血筋だから大切なんだろうな。
大事な娘だしね。
エミリアの母は幼い頃に亡くなったと聞いたし。
王も頭が痛いよね。
・「俺が必ず守りますよ。」
自信は無いがそう言わないと動けない。
出来れば俺も早く前線に行きたいのだ。
・ロドルフ
「浩二殿、、、、」
暫く考えるロドルフ。
・ロドルフ
「どうか、どうか娘をお守りください。」
やっと話がまとまった。
俺は急いで前線に向かう。
もの凄い重装備のエミリアと共に。
その装備重くない?
~最前線~
・コーン
「こうしてみると圧巻だな。」
ここは平原と林の境目に位置する場所。
前線基地は林の中にある。
ゲートからはまだかなりの距離がある。
しかしその大きさはここから見ても凄まじい。
思わず尻込みしてしまいそうだ。
・兵士達
「に、、、逃げてぇ、、、」
士気がかなり下がって来た。
あれだけ息巻いていた兵士長すらも飲み込まれようとしていた。
・「おまたせ」
そんな中、浩二が到着。
途中で装備を脱いだエミリアも一緒だ。
やっぱり重かったらしい。
・コーン
「エミリア様!?いけません。
ここはもうじき戦場となります。
王族のあなたがこんな所に来るなんて。」
・エミリア
「王族だからです。
あなた方兵士も大切な我が国の民。
ならば王族が安全なところで見て居るだけなど出来る訳が無い。我が父ロドルフに変わり、エミリアがこの戦いを見届ける。
どうか私に力を貸して下さい。」
兵士たちのどよめき。
そして喝采。
折れ掛けていた兵士の心に火が灯る。
士気が一気に高まる。
そして、、、
・兵士
「みろ、ゲートにヒビが入った。」
・コーン
「総員準備は良いか?」
・兵士
「おおー!」
弱気になっていた兵士達が大きな声を上げる。
やる気十分だ!
やはり王族が前線に居ると士気が違うね。
・「俺の合図があるまでは突撃厳禁で。」
水を差すようで悪いんだけど。
こればかりは譲れない。
だってFFで死なせちゃったら目覚めが悪いし。
・コーン
「皆聞いたか?遂に勇者が本気を出すぞ。
合図が出るまで魔力を高めて待機だ。」
毎日コーンにボロボロにされていた。
そんな俺だが言う事を聞いてくれる。
良い指揮官になるよ、コーン。
お陰で俺のやる気もMAXだ。
バリ、バリバリ
平原に響き渡る嫌な音。
ゲートが開く、、、
バリーン
大きな音と共に魔物の軍勢が押し寄せる。
めちゃめちゃ多くないか?
跳ね上がった士気が一気に下がる。
こんな敵軍勢を前にしたらそうなるよな。
エルデン軍 50名
王の護衛に 7名
魔物の軍勢 ざっと見て200以上
まだ増えてるね。
兵士達は逃げたいだろうな。
・コーン
「踏みとどまれ!恐怖に打ち勝て!
我々が退けば愛する家族が死ぬ事になる。
我々が最後の壁だ。死ぬ気で死守しろ。」
兵士長の掛け声で何とか耐える兵士達。
よく見ればコーンも震えている。
泣きながら耐える兵士も沢山いるな。
・エミリア
「大丈夫、、、浩二が居るから。」
そんな中、エミリアだけは笑顔だった。
何故そんなに俺を信用できるのか解らない。
・コーン
「エミリア様。」
エミリアの態度に兵士達も正気を取り戻す。
エミリアが前線に来た意味があったな。
魔物の軍勢はバラけない。
真っ直ぐこっちにやって来た。
綺麗に一直線だ。
・「好都合だ、、、
しっかりと全部範囲に入りそうだ。」
既にゲートから魔物は出てきていない。
どうやら全部出現した様だ。
何故わかるかって?
それは今からある技を使うからだ。
空爆要請なんだけどね。
要請時には遥か上空から見る視点になる。
・「行くぞ、重爆撃機フォボス。」
つまり、現在俺の視点は上空から全体を見渡している状態なのだ。
・コーン
「じゅうばくげききふぉぼす?」
・エミリア
「新しい魔法?」
2人は別々の反応を示してくれる。
・コーン
「な、、、何も起こらないのだが?」
この要請には少し時間が掛かるのだ。
爆撃機が登場するまでのタイムラグ。
ちゃんと計算して落としてるから心配しなさんな。
魔物の軍勢はかなり近くまでやって来ている。
・コーン
「浩二殿、、、合図はまだか?」
怖いだろうなぁ~。
それでも待ってくれるのが嬉しい。
・「よく、耐えてくれた。」
俺がそう言葉を発した瞬間。
何処からともなく現れる爆撃機。
目の前でとんでもない爆発が発生する。
絨毯爆撃だ。
真っ直ぐ続く魔物の群れ。
群れを綺麗に包み込みながら真っ直ぐ爆撃。
無数の爆弾が投下される。
とてつもない轟音と熱気。
まじかで見るとエグイな。
暫くして、、、、
・コーン
「ま、、、魔物が、、、」
あれだけの爆撃なのに大地は無傷。
少し凹むけど直ぐに元に戻るんだよね。
こんな所までゲームと同じか。
こりゃFFも再現されてそうだ。
爆撃の終わった平原は静かだった。
だが僅かに取りこぼした魔物が居る。
目視で数えれる程度だな。
・「残りの魔物は任せて良いか?」
俺の言葉で我に返るコーン。
・コーン
「残りわずかだ!打ち取れぇ~!」
兵士達が走り出す。
爆音のせいで馬は逃げてしまった。
馬に乗らない様に待機しててね、と伝えておいてよかった。
残った魔物も反撃に出る。
しかし新装備を身にまとう兵士に圧倒される。
程なくして全滅させる事に成功した。
ちなみに俺は初期位置から動いていない。
エミリアも俺と一緒に居る。
遠くではコーンと兵士が勝どきを上げていた。
そして意気揚々と戻って来た。
兵士達の凱旋だ。
~前線基地~
ロドルフ王が数人の護衛と待機している。
前線が崩れた時、真っ先に死ぬのは我々だと息を巻いていた。
完全武装で待ち構える。
先程、大きな爆発音が聞こえた。
凄まじい振動と爆音。
兵士の魔法ではない。
規模が大きすぎる。
ならば魔物の攻撃か何かだろう。
、、、王は腹を決めた。
・ロドルフ
「もうじき魔物がやってくるだろう。
何処に逃げても同じ事。
ならば一匹でも多くの魔物を倒して逝く。
逃げたいものは逃げても良い。
最後に花を添えたい者だけ付いて来い!」
王は馬にまたがり前線へと向かう。
もはや前線基地など意味はない。
基地は放棄、捨て身で攻撃あるのみ。
護衛の兵士達は誰一人逃げない。
王に付き従い死ぬ覚悟だ。
もうじき林を抜ける。
その先の平原には魔物が居るだろう。
自分たちの死が待っている。
・ロドルフ
「命の限り突き進めぇぇぇ!」
・護衛
「おおおおおおおおおお!」
王達の雄たけびは平原に響き渡る。
死を覚悟した人間は強い。
・コーン
「あ、、、ロドルフ王。
お疲れ様です~。」
王の雄たけび聴き、大声で挨拶するコーン。
凄まじい勢いで林から出てきた王様。
それを見ていた俺達。
、、、、なんか気まずいな。
だって王達は唖然としているんだもの。
・ロドルフ
「ま、、、魔物はどうした?
まだ出てきていないのか?」
絶賛混乱中の王様。
・エミリア
「魔物なら討伐しました。
大半が消滅したと言って良いのかしら。
浩二の爆撃大魔法『フォボス』よ!
浩二は炎の魔法も使えるのよ!
すごいのよぉぉ!」
後半はエミリアの絶叫とも言える報告。
コーンと兵士達のテンションが上がる。
あの光景を思い出したからだ。
・ロドルフ
「一体、、、何が起こったのだ?」
王達は平原を見渡す。
良く見れば離れた所に魔物の亡骸がある。
こちらの兵士より少ない。
少数の襲撃だったのか?
・コーン
「詳しく話せば長くなります。
まずは帰還いたしましょう。
国民が待ってますよ。」
コーンの提案で屋敷に戻る事にした。
護衛組は兵士たちに事情を聴いている。
王はコーンに聞いているみたいだ。
エミリアは俺の馬に一緒に乗っている。
、、、逆か。
俺が馬に乗れないのを知っているエミリアが乗せてくれているが、俺はエミリアにしがみ付いて落ちない様に奮闘中。
なんだか少し情けない気がする。
・ロドルフ
「一撃で数千の魔物を消し去っただと?」
そんな声が聞こえてきた。
おいコラ、話を盛るんじゃないよ。
数百体って所だと思うぞ。
・コーン
「私は浩二殿を甘く見ていた。
彼こそ真の勇者、いや救世主です。」
こっぱずかしい単語が聞こえてきた。
一国の姫にしがみ付いて馬から落ちない様にしている救世主ってどんな奴だよ。
まぁ、でも悪い気はしない。
ロドルフ王達は半日かけて屋敷に戻った。
屋敷には逃げてきた村人たちが屋敷の庭に全員が固まっている。いつでも逃げれるようにしているのかな?
・西の村長
「ロドルフ王よ、どの国に逃げればよい?
それとも我々は助からぬか?」
どうやら逃げて来たと思われている様だ。
ロドルフ王は村長の言葉を無視して進む。
そして庭の中央に来て叫ぶ。
・ロドルフ
「皆の者、魔物の脅威は去った。
我々の勝利だ!」
大きく武器を掲げて叫ぶ。
一瞬何事か解らなかった村人。
兵士の勝どきで現状を把握した。
兵士達が倒した魔物を運び入れる。
勝った。
厄災を打ち払ったのだと理解した。
・ロドルフ
「だが厄災が収まったわけではない。
気を抜かず日々の生活を続けてくれ。」
ロドルフ王の一言で気を引き締める人々。
第2波はエルデン軍の勝利で終わった。
次の厄災はいつやって来るのか。
それだけが気がかりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます