これも誰かの夢になる。

エリー.ファー

これも誰かの夢になる。

 いずれ、自分のことを思い出す時に、あの日のことは心の底にずっと残り続けるのだろう。

 合わせ鏡のように見えた自分の青春をかなぐり捨てて、自分の知っている生き方を模索した。

 完全になりたかったのだ。どんな形でもいいから、自分の思う姿で、自分の知っている世界で、自分の知らない未来で、自分が気付いていない方法と手段で。

 愛を知りたいとか、そのような意味で行動を起こす者もいるが、私は違う。

 もっと大きな意志だ。

 誰の目にも明らかな、世界に一つだけしかないような希少性と重要性を自分の中に生み出し、状況を変えてしまうような力が欲しい。本当のところを言えば、自分はきっと何者にも憧れてはいなかったのだろう。

 重症だ。

 重症の患者だ。

 死体であり、死んでいて、ゾンビであるのかもしれない。

 どこかに記憶や記録を残すべきであったと思ってはいるが、今はもう遅い。

 地球の裏側でしかな聞こえてこない歌声を、耳の中で爆音で流しながら、脳みそがとろけるように情熱が湧き出てくるのを待っている。そして、それが私だけの作り出した方法論から逸脱した、もっと大きな答えによるものであることを知っている。

 嘘をついているわけではない。

 私は。

 私は、もう。

 私以上の価値を持つ人に会ってしまったのだ。

 自分の才能がどこまで通じるのかを試して生きてきたが、まったく同じ人間はいなかった。けれど、私と同じ線路を走り、しかし、明らかに前を走っている者を何人も見てしまったのだ。

 私は、この場所で、自分を探している。

 百と、一を足し合わせて、千のはざまに見える、万と億からなる、都の言葉。それらを紡いで、自分を知ろうとしてしまう。

 いないのだ。

 いない。どこにもいないのだ。

 忘れられることを自分の本当の生き様であると、自分に言い聞かせて、はじき出された計算方式。乗船を許可されない島民たちの泣き言を背中で聴くという快感に酔いしれて生きる、浅はかなオウムの死体。嘘ではない。真実でもない。現実の代わりに置いてきた、人生の言い訳。

 私はたぶん、地球を滅ぼしたかったのだ。

 人類から出て、偉大な何かになりたかったのだ。

 上から見下ろすということをしてみたかったのだ。

 自分の存在が矮小であるということを意識してしまうと、自分の脳みそから出てしまって戻ってこない、思考の一つや二つ、気にならなくなってくる。

 真っ白い世界に黒いインク。

 黄色い家に住んでいて、そこからヨーロッパを巡っても、自分の本当の仲間に出会えない。

 本当とはなんだ。

 ずっと、本当を求めて。

 ここではない、ここではないと言い訳を繰り返し。

 生きてきてしまった。

 みんな死んでも、私は私だ。

 私が成長するわけでも、私が敬ってもらえるわけでもない。

 権力を持つことのピークは持つまでだ。一度、持ってしまったらそれまでだ。

 だから、今が一番楽しいのかもしれない。

 私は何もかも壊して新しい世界を創造する。そのあたりの細かい部分はそこに落とす人間たちのやることだ。私は私のやりたいことしかしないし、やりたくないことはやらないだけである。

 才能だけはあった。

 実力だけはあった。

 その理解が積み重なった先の未来を作ってしまった。

 どうにもならない。

 私は私の思うままであるし、それを他人に押し付けるだけの世界を築けた。

 あなたは、どうだ。

 あなたに尋ねている。


 疑っただろう。

 その延長だよ、この世界は。

 君にとっては残念なことだろうが、中心だったのだ。

 全部、本番だったのだ。

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