・よだかの星
ある日、
俺は家に帰ると弟がまだ帰ってないことに気づいた。
「母さんただいま」
「ああ恭画おかえり。」
「ねぇ、綾は? 」
「え、誰?お友達? 」
「は?何言ってんの綾だよ綾斗。俺の弟さ。」
「え、変な冗談言わないでよ。私たちの子供はあなただけよ。」
「え、何言ってんのはこっちのセリフなんだけど」
「え、怖いんだけど何何?恭画疲れてるんじゃない?ご飯までまだあるから休んでなさい。」
と言われる。自分の部屋に向かう途中弟の部屋を覗き込んだ。そこには何も無かった。使ってない部屋同然だった。何かの間違えだと次の日学校で弟と親しかったバンドメンバーに話しかけたが俺を含めて誰ですかの状態だった。バンドのボーカルも
その時、一人の女とすれ違った。異端な制服に目を引かれた。そう言えば、こいつが、昨日弟と喋ってるのを見た。
「あの。馬場綾斗を知りませんか?俺の弟なんですが今いなくて探してて」
とハキハキと喋る。すると彼女は驚いた顔をしたが次には冷静な声で
「さぁ?」
と聞き返してきた。それ以降その女と会わなかった。次に会ったのは高校のときだった。
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「なんで、なんで俺は消えた人を忘れないんだと思う?」
去り際に恭画は私にそういう。
「俺も人じゃないって言ったらどうする?」
「何を言ってるんだか訳が分からないわ」
「なら、返事しなきゃいいんじゃないですか呉橋聖羅三代目」
「!?」
私は思わずふりかえった。彼はニタニタ笑っている。
「種族とかまでは分からないが俺は捨て子だ。親が人間でなくても何ら不思議ではない。それは、あんたらが一番わかってるんじゃない?」
こいつはどこまで知ってるのだろうか。少なくとも鈍い彼の嫁よりは賢いだろうな。
「お前何言ってんの?」
「兄様張り合わなくていいわ。」
恭画に噛み付く勢いの兄を私は制する。
「確かに、本家に仕える人外の召使いが昔一人逃げ出したのをいたのを聞いたことがある。もしかしたらそれと人間のハーフかもね。なら、ありえるわ。」
「認めるんだ?」
「まぁ言ったところで誰も信じないでしょうしね。」
「俺を生かしておいていいんですか?」
「ええ。逃げ出した駄犬に用はないとお祖母様は言ってらしたから。」
「そっか。」
「あと最後に聞きたいのだけど。馬場彩をああなるまで何故ほっといたの?」
「ほっといたわけじゃない。俺はむしろ忠告したよ。別に初めは応援するつもりだったよ。ただ、途中からあの子はチャンスを捨てるようになった。美緒に絵の仕事を押し付けた。一回くらいなら見逃したが、それに味をしめはじめた。そんな奴と同職になる気はなかった。」
「それが逆効果だったと。」
「まぁな。いろに彩という字を当てたのは色彩という意味ではなく光彩という意味でつけたんだ。鮮やかな光。自分の人生が際立って光り輝くように。別に絵の仕事に就いて欲しくてつけた訳じゃない。」
「世の中名前は人生を表さないものね」
「南総里見八犬伝の伏姫が例外なだけだ」
「あら、日本史の時間はずっと寝てたから知らないかと思ったわ。」
「あの話だけ好きでね。だから、俺が適当に付けられたのもあるが名前には思いをすごく込めたつもりなんだが」
「ダメだったわね。ふふ。今度こそあなたに会わないことを願うわ。」
「こっちもな。」
そう言って彼と私は別れた。
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