・赤ずきん
「兄様、まだあの人と仲良しなの?」
あの人とは荒川のことだろう。
「まぁね。あいつの近くにいると女の子がすぐ不幸になるから。今回は持った方だよ。」
「兄様の友達はみんな性格か生活に難がある人ばかりだから私は不安だわ。」
「大丈夫だよ。深く関わらなければ良い奴ばかりだ。」
聖羅は一つ咳払いをする。彼女は気まづくて話のテーマを変えたい時にそうする。
「失礼。話を変えると、良くない環境下で育ち白馬の王子様のように夢幻想を抱いて自分は何をせずに待つ、典型的なシンデレラ症候群ね。もしかして題名をシンデレラにさせたくなかったのはこの為?」
と聖羅は呆れ顔をうかべる。
「いや、あれは単純な俺の意見だよ。それにシンデレラが題にピッタリの人なんて結構いると思うよ。だし、これにつけて欲しい題名は、青髭なんだ。」
彼女はそう聞くなり驚いた顔をする。
「まさか、兄様あの部屋バレてしまったの?」
「うーんまぁね。」
「私はあまり強制的にフィクションを作り上げることをしたくないのだけれど。」
「強制的にはしないよ。」
「さすが兄様ね。じゃぁ、任せるわ。失態をおかしたらダメよ。」
「おー、怖い怖い。分かってるよ。」
「でも、題名は赤ずきんにしましょ。」
「何で?」
「ペロー童話で有名な青髭。しかし、あの作品は最後に脱出して、女の子を取り逃がし青髭は死刑されてしまう。でも、ペロー童話の赤ずきんは主人公の赤ずきんは助からない。大丈夫だろうとは思うけど、言霊的に念の為ね。ああ、言霊だとニュアンス違うかな。」
「どうだろね。俺は聖羅と違って文学に長けてるわけじゃないから。じゃぁ、俺は行くよ。」
俺は飲み物代を置いて彼女のテーブルを離れる。
-----------------
私は走った。閉じ込められていたが、何とか助かった。この家は謎に地下があった。そこに閉じ込められていたようだ。恐怖で上手く走れない。玄関が一直線に見えたその時、そんな玄関から彼が帰ってくる。
「ああ、大丈夫?」
何が大丈夫なのだろう。彼はニッコリ近ずいてくる。私はガタガタ身体を震わせながら
「お、お願いします。ここから出してください。」
と懇願する。すると、
「いいけど、これ書いてくれない?そしたら。俺から解放してあげる。」
と紙をだす。なにかの誓約書だろう。私は一通り目を通すとどうやら彼の多分妹の書く話に自分を載っけてもいいかという同意書のようだ。なんだ、こんなことで助かるのか。私は急いで自分の描きなれた名前を書く。普段の丸っこい字ではなく汚い字で、書き終えると私は開放感があった。しかし、次の瞬間失明したかと思うくらい真っ暗な場所にいた。そして一気に今までの悲惨な記憶が頭の中でゆっくり流れる。嫌だ。死にたい死にたい死にたい。指先に何か痛みが走る。その辺を探すとどうやら包丁らしい鋭利なものがあることに気づいた。これで死ねる!
「優しい男には注意ってね。まぁ、俺やあいつが例外なんだけど。」
最後にそんな声が聞こえた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます