トイレ清掃員ぶるぅす
鯨井イルカ
ゴミ箱についての諸々
第1話 キャベツと流行のアイテム
トイレ清掃というと、3K(キツイ、汚い、危険)の分類に入る仕事と思われるかもしれません。それでも、幸いなことに今のアルバイト先は、キツイだとか汚いだとかはあまり感じません。
危険さは……、まあ……、このご時世ですから、外に出る他の仕事と同程度くらいということで……。
ただし、キツさをあまり感じないといっても、まったく何事もないというわけでもないので、日々の中で印象に残ったことなどをつらつらと書いていこうと思います。
まず手始めに、仕事内容はどんなものかというところから。
基本的な業務は、商業施設にあるトイレの、トイレットペーパーの交換、ゴミ箱の中身の回収、汚れた箇所や水場の清掃です。それに加えて、落とし物の対応なんかも、そこそこの頻度で発生します。
そんな中でも、印象に残るようなことが発生しやすいのは、ゴミ箱の中身を回収するときです。なので、しばらくは、ゴミの回収についての話が続く予定です。
商業施設のトイレのゴミ箱に捨ててあるものといえば、紙くずだったり、化粧直し用のシートだったり、ペットボトルなどの飲み物の容器だったりを思い浮かべるかと思います。実際に、そういったゴミがほとんどです。
ただし、ときおり予想だにしないものが、潜んでいたりします。
例えば、とある日に見つけたのは――
袋に入った大量のキャベツの外葉
――でした。
なぜ、こんな所にキャベツの外葉が?
ここ、衣料品売り場のトイレだよね?
ファッションアイテムとして、流行ってるのか?
それで、大量に買ったはいいけれど、我に返って捨てていったとか?
などと混乱するくらいに、そのときは驚きました。
ただし、どんなに驚いても、どんなに不可解な思いをしても、そう長い間足を止めているわけにはいきません。限られた時間内に、担当する場所をすべて掃除しないといけませんから。
なので、わけが分からなくても、何食わぬ顔をしながら回収して、次の掃除場所に向かうしかないのです。
まあ、何食わぬ顔をしていても、不可解なゴミについての妄想で、頭がいっぱいになりますが……。
その日は残りの作業時間中ずっと――
パステルグリーンのゆるフワウェーブで、街の視線を独り占めしちゃえ!
――という煽り文句がつけられた、キャベツの外葉を頭に被ったモデルさんが表紙になったファッション誌が出てたらどうしよう、などと考えていました。
ちなみに、キャベツの外葉が捨ててあったのはその日だけでしたし、キャベツの外葉を被ったモデルが表紙になった雑誌もなかったので、ファッションアイテムとして流行っていたわけではないみたいです。
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