君✖︎君のため人馬一体で異世界のダービーに勝つ方法

よしかわゆきじ

序章 落雷

 雨の降りしきる国際競馬場。第四コーナーを回って先頭に立ったのは黒鹿毛の3歳馬だった。


 その名はハヤテオウ。デビュー時からお手馬にしてきた若手ジョッキーの芝野駿馬(しばのしゅんま)はムチを入れることもなくポンと首筋を叩く。これまでも、ほとんど思いのままスタートからゴール板まで駆け抜けてきた。


 3歳馬にとって最高峰のレースであるナショナルダービーでも変わることはない。1.3倍の人気に応える力強い走りに、雨中のファンも歓声を投げかける。残り300、200・・・すでに2番手からは5馬身が開いていた。


 この最高の舞台で勝つ瞬間まで、駿馬はとにかくハヤテオウの邪魔にならないように、バランスよくまたがることだけを心がけた。100、50、ついに勝利の瞬間が訪れる。ゴール板を過ぎたところで駿馬は右腕を突き上げガッツポーズした。


 スタンドから割れるような歓喜が起きた瞬間だった。唐突な稲光が人馬を襲う。


 ドゴーン!


 巨大な音が競馬場に鳴り響いた時には人馬がその場から消えていた。

















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