第四十六話 情事の後。

 その後は僕はほとんど横になっていただけだったと思う。思うというあやふやな言葉の理由は途中から疲れ切ってあんまり内容を詳しく覚えていないからだ。

 だけど、全部終わった後のどうしようもなく虚しい喪失感とそれを埋めてくれる優しい声と柔らかい抱擁。気がつけば最後に残ったのは心地の良い疲れだった。淡藤の声に癒されながら、いつの間にか眠ってしまっていた。

「紬くん、おーい。起きて、彼女が帰っちゃうよー」

「待って、今起きるから」

 目を閉じたまま無理矢理に鉄の塊みたいに重たい体を起こした。

「それ起きてるの。ぼーっとしてるとチューしちゃうよ」

 僕はなんとか目を開けて淡藤を見た。どうせキスをしてくれるならしっかり見たいからだ。

「あ、起きちゃった。じゃあ私はもう帰るね。寝るならちゃんと布団かけて寝てね」

 ん、何を言っているんだ。キスの約束を果たしてほしいんだけど。

「淡藤、ちょっとだけこっち来て。」

 どうしても可愛い彼女とキスがした買ったから淡藤の首に手を回してたっぷりと唇を重ねた。

 柔らかくて甘い。

「もう、いきなりこんな……。またしたくなっちゃう。まだしばらく我慢しなきゃなんだからあんまり困らせないで。辛くなっちゃうよ。」

 今日こんなに枯れ果てるまでしたのに。他の女の子を知らないから予想になっちゃうけど、多分淡藤はかなりえっちだ。可愛くてえっちとは、まるで男の子の理想を現実にしたみたいだな。

 体を起こしてしばらく経ったら意識もだんだんはっきりして、改めて淡藤に好きと可愛いを伝えて青木家の前まで送った。

 その帰り道を歩いている時からとてつもない眠気に襲われて、家に帰ってご飯を食べてお風呂に入って、ベッドでタイマーをセットするために目覚まし時計のことを思い出したをところでもう朝になっていた。

 幸いアラームなしで起きられたが昨日は久々にがっつり勉強をざぼった。でも後悔は全くない。これぽっちも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る