第四十話 少女の吐露。

 冴月さつきが急いで二階に上がった後、早くなった鼓動を整えて残ったお茶を飲み干した。

その間に千智ちさとさんは買い物に行くと言って出かけてしまった。

 千智さんがどこまで本気だったかは分からないけど、あのまま冴月が来てくれなかったら何か間違いが起こってしまっていたかもしれない。

冴月が来てくれて助かった、お陰で淡藤あわふじを裏切るような事をせずに済んだ。


 --トントントントン。


 しばらくしてから再び階段を降りる音がして、冴月がリビングに入ってきた。


 「お待たせ、えっと、とりあえず私の部屋行こ。」


 「え?」


 「なんか話、あるんでしょ。早くしてよ!」


 さっきまで恥ずかしそうにモジモジしてたのに急に言葉の勢いがすごい。

ここでごねる理由もないし、大人しく言われた通りにしよう。

 冴月に促されるまま階段を上がると「冴月」と書かれたネームプレートの掛かった扉がある。花柄があしらわれていて可愛い。


 「ピアスバチバチの人の部屋には見えないな。」


 「は?うるさ、そんなこと言ってないで早く入って。」


 部屋の中は整理整頓されていて綺麗にしてある。


 「勉強机にしか椅子ないから、テキトーにラグの上座って。」


 ふわふわのラグの上に腰を下ろす。


 「で、何?わざわざ家にまで来たんだからそれなりの用事があるんでしょ。てかないなら来んな。」


 どうやって切り出そうかと悩んでたら冴月の方から話を振ってくれた。

となると次はどうやって穏やかに言おうかが問題だ。

なんで最近学校に来ないのかとかそのまま聞きづらいしな。


 「えーっと、なんか、最近調子どう?」


 「はぁ?なんだそれ。」


 冴月は言葉のまま嘲笑って感じで笑った。


 「調子はまあ悪くないかな、良くもないけど。」


 「あー、そっか。」


 どうしようかな、話が終わっちゃったな。


 「悪くないならなんで学校来ないのかって聞きなよ。」


 「え?」


 「だから、それを聞きに来たんでしょ?違うの?」


 うわぁ、言われてしまった。

なんか本人から言われると、やりづらい。


 「そうだけど。」


 「だったらさっさと聞きなよ、遠慮するような中でもないでしょ。」


 「ーーまあ……、それはそうかも。」


 冴月はなんとなく、呆れたような悲しいような、そんな顔をしてた。

でも今日来たのは冴月のいう通り休み続けてる理由を聞くためなんだから、聞かずに帰るっていうのは選択肢に存在しない。


 「教えていただいても良いですかね?」


 「本当に知りたいんだ。」


 「はい。」


 「ほんとーに聞いちゃって良いんだね?」


 「お願いします。」


 「……。」


 ここまできて冴月が黙ってしまった。

冴月の表情は、悪戯をしようとワクワクしてるガキンチョって感じだ。


 「よく聞いててね。」


 「ーーはい。」







 「つむぎ……、お前が好きだから。」

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