第三十八話 心任せな招待。
いざ
まあ実際にやっていることを言葉にしてしまうと、いきなり人の家に娘と話をさせろって押し掛けてるんだから。
今考えたら事前に冴月のお母さんに連絡してからくるべきだった。
優しい人だから無下にはされないと思うけど、いい人だからこそ幻滅されたくないな。
そんなことを考えてもたもたしていたら、後ろから声をかけられた。
「何か御用ですか?」
「うわっ!?」
驚いて振り返ると、さっきまで思い浮かべていた優しげな顔があった。
ついでに言うとお母様とは思えないほどの引き締まった体とたわわなお胸も。
「あらあら、そんなに驚くとは思わなくて、ごめんね。」
あらあらって言った、あらあらって本当に言った。
「もしもーし?」
「あっ。」
漫画とかアニメでしかありえないことが目の前で起こったことに感動して放心していた。
それよりも、前にあってからしばらく経ってるし、まだここにいる理由も答えてない。
「あの、
「うんうん、もちろん覚えてるよ。特に紬くんはね。」
「え?なんでですか?」
前に家に来たときはバンドメンバー全員揃ってたし、特に目立つことをした覚えもないんだけど。
自分でも気が付かないうちにテンションが上がって騒いでたのかな。
というか下の名前で呼ばれたな、ちょっと照れる。
「いいのいいの。それよりも、今日はどうしたの?」
「あー、えっとー……、冴月さんと話をさせていただきたいんですけど、いらっしゃいますか。」
「うーん、いるにはいるんだけどねー。」
当然の反応だ、突然娘に会わせてなんてやっぱり無理があった。
「いや、あの、やっぱり今日は帰ります。いきなり押し掛けてすみませんでした。」
「あーだめだめ待って、帰らないで。上がっていて。冴月ちゃんが話してくれるかは分からないけど、おばさんとお茶しましょ。この間美味しいお菓子いただいたから食べて行って。」
押し掛けた上にお茶をご馳走になって帰るのはどうなんだ?
「あーでも、やっぱり申し訳ないですし。」
「こんなおばさんとお話しするのは嫌?」
「いや、とんでもないです、すごくお綺麗です。」
こんな綺麗なお母さんなんて世の中になかなかいない。
「じゃあ、ほら上がって。」
「お邪魔します。」
結局お邪魔することになってしまった。
でも冴月と話せるかもしれないし、お茶をいただいたらお願いしてみよう。
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