第十七話 音の流れ。

 メンヘラの不気味さで背筋を震わせたあの日からほぼ一週間が経った。

今日の放課後、金曜日の十六時から軽音部の新入生歓迎ライブがある。

僕が軽音部に入部したきっかけもここでみた三年生の演奏だった。


 「なにつむぎ、緊張してんの?」

 「ちょっとね。冴月さつきは?」


 冴月はいつものイメージ通りこういう場面ではむしろワクワクするらしい。

こういうやつだからうちのバンドリーダーに任命されている。

 「ヴォーカルなんだからしっかりしてよ。」

 「うす。」







 ーキーンコーンカーンコーン。


 放課後になって急いで準備する。

久しぶりだ。

ライブ前のこの興奮と緊張が混ざった感じ。

ほか三人の表情も少し張り詰めている。

全員がライブに集中している一体感が気持ち良い。


 「よーし、いいかお前ら、新入部員がどれだけきてくれるかは我々の活躍にかかっている。従って、我々に失敗は許されない。わかったな!」

 「……。」

 「わかった!?」

 「は〜い。」


 毎回冴月のこういう言葉でいい具合に緊張が解ける。

やっぱりリーダーに向いてるんだよな。


 「冴月、もう出番だって。」

 「うみちゃんもわかった?」

 「わかったわかった、行こ?」

 「オッケー。」


 新入生歓迎だからガンガンかっこいい曲をやりたいってことで、時間いっぱい三曲全部ハイテンポでアガる曲だ。

リードギターの歪みまくった音の波が耳に刺さる。

スネアドラムの硬い響きが会場中に広がって、ベースの重低音がお腹を揺らす。

全員が走ってリズムが崩れるギリギリのところで演奏してる。

あーもう最高!楽しすぎる!!!!!






 「ありがとうございましたー!軽音部きてね!」

 今年度最初のライブが終わった。


 「楽しかったー!」

 「マジでよかったね。」

 「リードのソロめっちゃカッコよかったじゃん!」

 「海もリムショット気持ちよかった。」

 「凛音りんねのベースも紬の歌もバッキングも本当にみーんな最高!」

 

 三年生になったから出演できる回数も限られている。

一回ずつこのメンバーで演奏できる時間を楽しんでいきたい。







 今日は楽しかった……。

夜になって気持ちの良い疲れが襲ってきた。

ベットに横になった瞬間体から意識が昇っていく様に眠りについた。

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