再生 意味:精神的に生まれ変わること

怜《れい》

第一話 平穏な春休み。

 

 「ーー人間関係ってめんどくさいんだな。」


 人との関わりほど複雑で奇妙で美しくやるせないものは無い。


 今日は三月二十五日、高校二年生から三年生に上がる春休み。

部屋で幼馴染の片瀬翔かたせ かけるとゲームに興じている。

貴重な春休みを陽が高くなるまでただただ時間を見送る。


 翔は近所に住む中学二年生で、僕が小学生の頃知り合った。母の紹介だ。

もともと体が弱く、小さい頃は入退院を繰り返していたため、あまり友達もいなかった。


 「そもそも学校に友達いたんだ。」

 「僕のことなんだと?」


 なんだろう?付き合いこそ長いが、僕は普段の翔の姿をあまり知らない。


 「孤独を愛する世捨て人?」

 「なんだそれ。」


 物静かな翔にはなんとなくあっている気がする。

この少年が大きな感情の起伏を見せたことは片手で数えられる程度だ。

だが、あの極度の人見知りだった少年が、ついに他人と友人関係を築けるほどの活目すべき飛躍を見せた。


 「翔がそんなに悩むなんて珍しいじゃん。」

 「僕だって学校で一人になりたくないよ。」


 ボイスチャットをしながらアニメや漫画のヲタクトークに花を咲かせるのが常だが、今日は友人関係の愚痴だった。

どうやら仲のいいグループの中で春休みになってすぐカップルが成立し、二人の世界ができていて、なんとなく気まずいらしい。


 「色恋沙汰かよー。気まずいなら会わなきゃいいだろ。」

 「話聞いてた?」

 「そんなん自分が楽なのが一番いいでしょ。」


 別に一人が好きなわけではないが、一人が何にも気を使わないのだから楽なはずだ。


 「だから一人が辛いんだって!……もういい。ほら、早く次行こうよ!」

 「あいよー」


 ご納得いただけなかったようだ。

僕には他人のことでそこまで悩む理由がわからないんだけどな。

もちろん友達と遊ぶのは好きだ。

でも友達のためにはそこまで悩めない。

その後いつものヲタクトークに戻り、時間を浪費。


 「じゃあまたな。」


 ひとしきり遊んで、翔との通話を終了した後、階段を降ってリビングに到着。

ちょっとずつ食べている高いチョコを一粒口に入れる。

ずっとこんな感じで過ごせればなー。


 「春休みって短いよなー。明日もだらだらしよう。」


そんなことを考えていると、リビングの電話が鳴った。

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