ここでいっちょわたしの話をしましょう


父は居らぬ。

母の実家でじーさんばーさんに育てられた。

両親の唯一のきおくは喧嘩している姿じゃった。


かーちゃんは金の管理が出来ませぬ。

自己破産したそうです。

暗黒一覧表にのったそうな。


小学生からの夢を追い掛け、東京さ出てきました。

しかし犬も猫も実家にはぎょーさん居りまして、動物達の居ない生活はさみしゅーてさみしゅーて……。


就職という人生の選択を迫られた時、家族(犬達)と過ごす時間が一番だと、夢をいとも簡単に捨て、実家に戻ったんじゃ。

あれだけ小さい頃から夢に見てたことをいとも簡単に捨てた。

家族(犬達)と過ごすために。


じーさんばーさんが死んでからは、

金も無い、借金の返済は毎日、いっそ死んだほうが楽なのかと思ったこともあったさ。


しかしその後も人生の選択では必ず家族を選択してきたんじゃ。

じぶんの夢と同じ業種で、折角就職した会社も半年でやめた。

そうしたらふしぎなことに、出逢うはずの無かった男女が何の巡り合わせか出逢ってしまった。

生まれた場所も、年代も違うふたり。

縁もゆかりもない場所で、出逢ったんじゃ。


家族を大切にしてきたら、わしの家族を大切にしてくれる新しい家族ができたんじゃ。


もしかしたらあん時すでに大切なものは分かっていたのかもしれん。


東京と比べるとなーーーーんもないとこじゃが、幸せじゃ。

足りないぐらいが丁度いい。

これで十分幸せじゃ。


東京さに居ると周りは物に溢れて、その分人も溢れて、その分欲望にも溢れて醜いところじゃ。

都会は恐ろしい所じゃ。


昼には鳶の声を聞いて、夜には梟の声を聞く。

それが幸せじゃ。


いまはもう、生きている、それだけで幸せじゃ〜。


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