第61話さよならのかけら

台風一過。


今日もよく晴れてる。


こういう時こそ元気の出る音楽を聴きたい。


レッド・ツェッペリンの「フィジカル・グラフィティ」を流す。


まだ明け方5時である。


神奈子からメールが入る。


また涙橋へ来て欲しいと。


いよいよかなという感じ。


涙橋は家から徒歩15分くらい。


自転車なら3、4分で着く。敢えて歩いて行く。


神奈子はセーラー服姿で待ってる。


神妙な顔をしてる。


「どうしたの、こんな朝早く」


素知らぬふりをするのも辛い。


「あのさ、私達別れない?」


予期した通り。今更お互いの溝は埋まらんのだな。


「そうか、別れたいか……」


「あまり驚かないのね?」


大先生もいなくなって、神奈子も失うのか。天罰だな。


「なんとなく別れ話になる気がしてた」


「そうなんだ」


神奈子の目尻は赤くなってる。昨日泣き明かしたんだろうか?


「まあ受験頑張ってくれよ」


せめてもの強がり……。いかんせん辛いな。


「じゃあね、楽しい思い出をありがとう」


神奈子の目からブワッと涙が溢れる。


「ごめんね、ごめんなさい」


神奈子は悪くないよ。悪いのは俺だ。


俺は無言で立ち去る。


こうして僕は1人。そして途方に暮れる。


2021(R3)10/4(月)

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