第44話Every Little Thing She Does

昼休みに同じC組の庭野昭二にわのしょうじが話しかけてくる。


「影川君、どう?文学部に興味湧いた?」


そういや小冊子渡されたが、まだ目を通してない。


「いや、文学ってほとんど読まないんだよね」


庭野の目が少し曇る。


「今部員が足りないんだ。検討してくれないか?」


「文学読まなくても部員になれるの?」


「君は文学青年の雰囲気あるから読んだらハマるよ」


雰囲気で決めるな、雰囲気で。


「そんなに運営が厳しいのか文学部は」


「正直、生徒会からの予算も削られてる」


生徒会ねえ……一番興味ない。


「まあ考えとくよ」


「いい返事を待ってるよ」


庭野は自分の席の戻る。




放課後文学部の部室で2年A組の昨日坂碧郎きのうざかへきろうは渋々本の整理をしてる。


同じA組の部長秋葉冬美あきばふゆみは捨てる本と残す本を分けてる。


「部長、これ終わらないよ、限りなき戦いだ」


昨日坂は椅子に腰をおろして、溜息をつく。


「今時文学なんて流行らないよなあ〜」


「じゃああんたはなんで文学部にいるのよ?」


秋葉は苦虫を潰しながら手は休まない。


「本が好きだからですよ、単純明快」


「ならもっと文学部に力入れてよ」


「入れてますよ。しかし今文学部は部長と俺とC組の庭野しか顔を出さない。他の部員は何をしてるのやら」


秋葉はそれには答えず「庭野がスカウトした新人はどうしたの?」


「同じクラスの一年ダブってる景川北雄らしいよ」


「脈はあるの?」


「さあ、文学に興味ないらしいですよ」


秋葉も溜め息を一つ付く。





生徒会長3年A組西園寺霧風さいおんじきりかぜは生徒会室で机の回転椅子に座り書記である2年A組東郷院龍平とうごういんりゅうへいに背を向ける。


「もっとカツを入れんとな、時期生徒会長さん」


ポーカーフェイスの東郷院も会長の前では顔が強張る。


2021(R3)9/9(木)





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