第42話雨はブルーにささやく

6時限目が終わった。


思わずグッタリくる。


さて至福のときが迫ってるのだが、正直複雑な心境だ。


大先生とのセックスは天国の快楽なんだが、やはり真っ当な道ではない。


大先生は人妻である。


旦那が生きてる限り犯罪同然なのだ。


あの初老のおじいさんとも言える黄昏た人が旦那か……。


一体自分はどこに向かってるんだろう。


高校卒業して働いて、それからどうなるんだろうか?


時には絶望的な気分になる。


未来が漠然とし過ぎてる。


こういう時人間って哲学とか宗教とかが必要になるんだろう。


いわゆる心の保険というものだ。


ダラダラと考えていたら大先生の待ってる喫茶店に着く。


今日はその気にならないな。どーしよう。


大先生はホットコーヒーをすすってるようだ。


自分を見ると。微笑む。


この女神の微笑みの前でNOとか言えんよな。


「坊や、実はもうしばらく出来なくなっちゃった」


「どうかしたんですか?」


意外な一言だった。


「実は私精神病院に入院するの」


「へ!?」


寝耳に水だった。


「結構精神を病んでるのよね、じわじわと。2年間坊やと会えない時期も実は入院してたの」


「でも依子さん、どこも病気っぽくないですよ」


「そう見えないのかもしれないけど、私は精神病なの」


バッサリ、一刀両断である。


大先生としばらくセックス出来ない。


いやこれでいいのだ。


「でも、朝はやる気満々でしたよね?」


「坊やに甘え過ぎてるのよね。結局」


精神病か〜。大先生がね。想像したこともない。


そうか、神様は神奈子を大事にしろと言ってるわけか。





雨は夜になっても降り続いてる。


まるで「ブレードランナー」みたいだ。


梅雨でもないのにね。


時間は午後7時。


お腹が空き過ぎて腹の感覚が変になってる。


9月初旬にして残金2千円ちょい。


お家へ帰ろう。


i phone から流れる坂本龍一の「Energy Flow」が雨色に泣いてる。


2021(R3)9/4(土)





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る