第31話秋よ来い

上等高校文学部。


部室は僅か十畳くらい。


入口の真正面に窓があり、両脇は本棚が雑然と並び本が数千冊収納されてる。


夏休みにこの部室に来てる部員は部長の2年A組秋葉冬美あきばふゆみと同じA組の昨日坂碧郎きのうざかへきろうだけだ。


昨日坂は漫画雑誌を読みながら、イヤホンで音楽を聴いてる。


秋葉のルックスが牧歌的なのに対して昨日坂は今時の洗練された都会っ子という所か。


秋葉は文学部は名ばかりの傀儡かいらいの部活であることは自覚している。


せめて体裁だけでも部活らしくしたい。


他の部員達が幽霊部員化していく中で孤軍奮闘していた。


「夏深し、隣りは何する人ぞ!」


秋葉は昨日坂を指差す。


「え、俺のこと?」昨日坂はそう言って漫画雑誌を閉じる。


「本の整理手伝ってよ、昨日坂と私くらいしか夏休みは出て来ないでしょ」


「だから部長さあ、綺麗な本見繕ってBOOK OFF に売った方が金になるって」


「綺麗な本なんてあるのかな」


秋葉は本を何冊か取り出してみる。


「ああ、綺麗な本混ざってる。」


「BOOK OFF で金にして新しい本仕入れた方が有意義でしょ」


昨日坂は膝を叩いて、立ち上がる。


「さて昼飯食べてきます」


「ちょっとこの量1人で片付けられないわよ」


「C組の庭野が来るでしょ、そろそろ。そういや誰か勧誘したらしいよ」


昨日坂はそそくさと退場。


全くスチャラカ男だなあと秋葉は呆れ顔。





景川北雄はなぜかスマホがなると咄嗟に反応していた。


そう大先生“津久茂依子”の連絡を待ってるのだ。


大先生も欲求不満らしい。


っつうか今の世の中欲求不満じゃない人なんているんだろうか。


さっきまで晴れていたが、空が怪しい。


そのうちパラパラと雨が降り始める。


我が上等高校の正門を抜け下駄箱で雨宿りするつもりだった。


そしたら先に生徒会副会長五宮ごのみやフレイユがびしょ濡れで立っている。


雨に濡れた彼女はなかなか官能的であった。


2021(R3)8/24(火)





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