第17話いつか文学を読む日

しかし数学というものを考えた人を恨まざるを得ない。


英国社はそれなりの点は取るが、数学だけのために高校をダブったと言える。


でも英語も出来なかったか……。


今日も数学の授業はあったが、教師の言ってることの半分も理解出来なかった。


高校卒業出来るのかなあ?


昼休みに教室であんぱん食べてたら神奈子が顔を出す。


「珍しいな、神奈子から俺のクラスに来るのは」


神奈子は眉を寄せて「あんた仁科になんかした?」


「たまに追っかけて来るから逃げてるけど」


神奈子は腕を組んで俺を見下ろす。


「仁科があんたと寝たと言ってきた。もう別れた方がいいよともね」


俺は吹き出して笑った。


「冗談じゃない。俺がお前を裏切るように見えるか?」


「仁科はいい女なんじゃなかったの?」


痛い所突いてくる。


「お前にそんなこと言った覚えはあるけど寝るわけないでしょ」


神奈子は目を細める。


「あんたがお持ち帰り出来る女に手を付けないとは思えない」


「随分信用がないんだな。仁科の言葉を信じるのか?」


「だって仁科が勝ち誇った顔で私を見下すんだもん」


神奈子は涙目になってる。やはり女の子だよな。


たまたま教室に誰もいなかった。


俺は立ち上がり神奈子を抱き寄せ頭を撫でる。


「悔しかったんだな。俺はお前を裏切ってないよ」


神奈子は小さく嗚咽する。震えながら抱き返して来る。






やはり強がってもまだ17歳の女の子である。


午後の国語の授業中に隠れてLINE で神奈子に励ましの言葉を送る。


本を読むのは嫌いではないが文学にあまり興味が湧かない。


ドキュメンタリーとかハウツー本ぐらいしか読まない。


国語の授業で芥川だ、夏目だ、太宰だ言われてもなあ?


今度床上に借りるかな?あいつ三島由紀夫が好きらしい。


食わず嫌いなんだろう。挑戦しましょう文学。


そういや同じクラスの庭野昭二が文学部の話してたな……。


ちょっと興味あるぞ。


2021(R3)8/3(火)














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