第94話 西園寺刹那と金髪のイケメン男子

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 食事は無事に終わり、俺たちは実に色んな所を見て回った。


 キュラシックパーク、アミティビレッジ、ウォーターパークにニンテンドーワールドと。


 時にはアトラクションに乗り、時にはカッコいい建物に入るなど、目眩く世界が目の前に繰り広げられた。


 普段リア充たちの生態系に無頓着な俺だが、こんなに素晴らしい世界を魅せられると、さすがに感嘆するほかない。


 相変わらず、周りの人々からすごく見られたりするが、別に俺たちに危害を加える様子はなさそうだ。いや、あるな。特に男グループからの視線に殺意が感じられる。


 なんで俺をそんな怖い目で見てるんだ。やっぱり外は怖い。アイラブマイハウス。


 一つ驚いたところは、あの二人が終始明るい笑顔でUSJを楽しんでいる点だ。


 確かに、あの二人だけでこんなリア充ofリア充が利用していそうな場所に来ると、女に飢えている下心ありまくりの連中に狙われるのは想像に難くない。


 現にそういうよからぬ考えを持っていそうなヤバい連中は、この辺りにちらほら見える。


 本当に獣の狂宴ここに極まれりだな。


 俺は呆れたようなため息をついてから周りを見回すと、ちょうどハリーポッターエリアの出口が見えて来た。


 スマホでUSJの地図を確認してみる。ふむ。一通り全部回ったって感じかな。数時間ずっと歩いたわけだし、西園寺刹那とゆきなちゃんは、顔こそ笑っているが、疲れが溜まっている様子だった。


 この流れだと、もう直ぐ解散という雰囲気になりそうだ。

 

「疲れたー」


「そうね。ずっと歩いていたから」


「でも凄く楽しかった!ね?お兄ちゃん!」


 姉妹は名残惜なごりおしそうにやりとりをしていたが、妹の方が突然、俺に話を振って来た。


「え?!あ、う、うん」


 俺は慌ただしく返答するが、ゆきなちゃんは、満足行ってない様子である。


「なんなの?その反応は?楽しくなかった?」


 ふんむくれた顔で俺をめ付けているゆきなちゃん。俺の辿々たどたどしい話し方は、周囲から見れば怪しく映るだろう。


 今、俺が本音をぶつけたら、この子は傷つくだろうか。それとも、取り繕ってその場しのぎ的な言い訳で逃げたほうがいいのだろうか。


 意外と答えはすんなりと出てきた。


「正直、これが楽しいかどうかは分からない」


「え?」


 西園寺刹那は笑顔から一転、意外なことを言われた時の表情で俺の横顔をチラッと見ている。


 でも、俺は西園寺刹那の視線を振り払って、言葉をつむぐ。


「でも、すごく新鮮だったし、い、いやじゃなかった」


 俺がもし、逃げるような発言をしたら、この二人のアンテナにすぐ引っかかって、詰問きつもんしてくること請け合い。


 俺は気恥ずかしさを感じながら頭をくしゃくしゃして目をらした。


「それでいいと思う」


「そうね。藤本さんの割にはいい返事です」


 二人は、笑み混じりの表情で俺に優しい視線を向けた。


 心が痛い。なんでだろう。俺がこの前、ゆきなちゃんを慰めてあげた時の後に込み上げてきた負の感情と似ている。


 どうして、俺は、言葉では言い表せない感情に苦しめられないといけないんだろう。


 あの笑顔を見ると、胸の真ん中が締め付けられるように痛い。隣を歩いている二人と俺の間に決して触れることのできない透明な壁があるように見えてしまう。


 でも、俺は表情を変えてはならない。不振がられてしまうような真似はするべきでない。この感情だけは、あの二人に気付かせたらダメだ。


 そう決めた俺は、こくりと頷いて見せた。だが、足を止めた二人の視線はいつしか、俺から前の方に移り、ある特定の人物をとらえている。俺も気になり、たたんだまま、姉妹たちと同じ方向に目を向けると、両端にいる綺麗な女の子二人と、真ん中にいる金髪のイケメン男子一人がこっちの方に向かって歩んでいる。


 やがて、その金髪のイケメン男子は、西園寺刹那の存在を確認すると、はたと目を見開いて、口を開いた。


「刹那ちゃん?!」


「西山くん?!」

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