第93話 勝手に消したりしちゃダメですよ
周りは
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「はい!パスタプレートとオムカレープレートとチキンプレートで!」
「かしこまりました!以上でよろしいでしょうか?」
「はい!」
「ご注文承りました!少々お待ちくださいませ」
いつの間にかやってきた店員さんに明るい声でオーダーを入れる西園寺刹那。注文を受け取った店員さんは素早く注文内容をメモって歩き去った。
俺は向かい側に座っている美人姉妹をただただボーと見つめている。二人ともスマホをいじっており、さも楽しげに画面を見つめている。俺もこの二人に
俺は頭の上にはてなマークを浮かべて差出人のところを確認する。
五十嵐麗奈。
その名前を確認した俺は顔を
とりあえず内容だけ確認してみよう。
『攻略、うまくやっているの?』
ふむ。スルーだ。これはスルーでいい。目の前のスーパー超美少女を攻略するのは、エベレスト山脈をなんの道具もなしで挑むような愚かな行為だ。ていうか、この件はすでに俺の中で達成不可能とすでに結論を出した事でもある。
ラインとかいうチャットアプリは、メッセージを読んだら、既読という印が付されるそうだ。だが、ショートメールはそんなのがないから気が楽でいいな。文明や技術の発展は時として人間に不利益を与える場合もある。これが最たる例だ。
俺は目を腐らせながら、あとでどういう風に返事をするかと悩んでいると、ゆきなちゃんの透き通る声が聞こえる。
「お兄ちゃん!」
「うん?」
「さっき撮った写真送りたいけど…ラインまたインストールできるかな?」
「ラインか」
嫌な響きだ。もちろん俺だって、ラインは使ったことはある。俺が大手会社に通っていた頃には、社内用携帯が支給されて、グループチャットとかに無理やり招待されていたものだ。それどころか、俺に対して、上司達から1日平均2000件のメッセージーが送られてきた。今思い返してみれば、本当に馬鹿馬鹿しくて
「だめ?」
ゆきなちゃんは突然表情を変えてウルウルとした目で俺を見つめている。まあ、ここは別に会社ではないから、いいか。
「いいよ」
そう言って、俺は素早く手を動かしラインアプリをダウンロードした。そして、適当にアカウントを作った。
「藤本さん」
俺がラインの設定に時間を
「なに?」
俺は手を止めて西園寺刹那の顔に視線を送った。彼女は、頬を
「これからは、勝手に消したりしちゃダメですよ」
皮肉めいた言い方で俺に言葉を発する彼女は、言い終えてからも尚、口をへの字にして
西園寺家に招かれた折、俺は頃合いを見計らって逃げ出し、ラインを消した過去がある。それからその1日後にこの姉妹は、俺の働くコンビニを突き止めて、めちゃくちゃ怒りをぶつけてきたっけか。
つまり俺は前科持ちってことだ。
「わ、わかった…」
俺は顔を
どうやらご満足いただけたご様子。
「お待たせいたしました!ご注文のパスタプレート、チキンプレート、オムカレープレートです!」
裁判官と
「ご注文の品は以上でお
「はい!」
「ではごゆっくり」
西園寺刹那は早速視線を店員さんに向けて対応してくれた。本当にコミュニケーション能力高いね。
店員が去り、俺たち3人は
「それじゃ食べましょう」
「いただきます!」
西園寺刹那とゆきなちゃんは、お腹が結構空いたのか、すぐさまフォークとナイフを握り込んで食事を始める。
だが、あの二人はすごく上品な食べ方をしていた。ていうか、ゆきなちゃんって、俺の家ではだらしのない行動を連発するけど、不特定多数が多く集まるこのような場面だと、お姉さん顔負けの品のある行動をするんだな。
「お兄ちゃん、食べないの?」
「う、うん?ああ、食べる」
ラインの設定は後でやろう。
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