第155話 甘々ショート⑦



 彼女とのドライブデート。

 車内前方にタブレット端末を設置して、目的地を設定する。ここ最近は彼女の役割で、愛らしい顔で私を見つめてきた。


「今日はどちらまで行かれますか?」


「うーん…………ローマ字で入力出来る?」


「ふふっ、お任せください♪」


「じゃあ……A……M……A……Y……A……S……H……I……Z……U……K……U……で、お願いね」


 意気揚々と入力し始めた彼女だったけど、途中から声にならない声を出し始めて動きが止まった。

 敢えて彼女の方は見ずにシートベルトを締める。少し意地悪かなと思い目的地を告げようとしたところ、彼女もシートベルトを締めて……愛しいナビゲーターになり始めた。


「……この先左折してください」


 主導権を握っていた筈なのに、いつの間にか彼女に奪われている。

 私に応えたい、そんな彼女の愛に負けるのは悔しいけど……幸せ。


「……この先交差点手前を左折してください」


 指示された場所……それは、私達がよく使う駐車場が広めのコンビニ。

 奥の方へ駐車すると、彼女は車内のカーテンを全て閉め……私の服の袖を掴みながら呟いた。

 

「……目的地に……到着しました」


 涙が零れそうな瞳、耳まで赤く染まった尊くも愛くるしい姿。

 シートベルトを外す音が二つ車内に響くと、目的地との距離はゼロになった。

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