第17話 とある日常
「では行ってきます。お昼前には戻ってきますから」
「うん、いってらっしゃい」
雫は大学に用があるらしく、アパートに一人残された。
整理された部屋、まさに彼女を表している。
ふと見ると、ベッドと壁の隙間に本が挟まっていた。
何かと思い見てみる。
……これって小学生向けのファッション誌だよね……?
なになに……“可愛いを作ろう☆控えめでモテるコーデ満載♡”
“付録!○○モンメチャ可愛ポーチ”
えぇ……
付箋が幾つも貼ってあり、勉強した様子が伺える。
正直、参考になる事なんて書いてあるとは思えない。
でも、臆病で奥手な彼女が勇気を出してこれを買って……多分私の為にしてくれているんだと思うと、心が温かくなる。
こんな事をしなくても、彼女はこの世界で誰よりも可愛いし、誰よりも彼女を愛してる。
せっかくなので私も付箋を貼る。
参考になるのか定かではないけれど……
最後に付箋にメッセージを書いて元に戻す。
◇
「ひっ、日向さん!!こ、これ見ました!!?見ましたよね!!?」
「うん、見た。ごめんね?」
鞄から○○モンのメチャ可愛ポーチが顔を出している。
顔を真っ赤にして、目に涙を浮かべている。
「雫は何を着ても可愛いよ。背伸びしなくてもいいから。そのままの雫が好き」
「で、でも……日向さんはいつも輝いていらっしゃるので……私なんかが隣に立つと……」
「……ううん、それは間違ってる」
「えっ……?」
「好きだから輝いて見えるんだよ。だって私から見たら雫はとっても……」
そう言いながら見つめると、彼女は恥ずかしそうに俯いて両の指同士をくるくると回していた。
堪らず抱きしめる。
「……まだご不満?」
「いえ…………でも……少しはお洒落に気をつけないと……」
「……じゃあさ、私が選んであげる。私の好みだけど」
「全部、日向さんの色に染めて下さい」
そう言って彼女からキスをしてきた。
私も彼女の色に染まっている。
十人十色なんて言うけれど、私達はお互いが混ざり合って同じ色をしている。
「……お揃いの服買おっか。ね?」
「わ、私も同じ事を考えてました」
色々な形があるけれど、私達はこうやって一つになっていく。
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