第15篇THIS MAN

その男には虚無という言葉が似合う


その男は普通に生活していたが、笑ってる所は誰も見ていない


その男は職場で自分の気配を消していた


その男に話かける同僚はいない


その男は時計の針が17:30を差すと一目散に退社する


その男は駅前の喫茶店で新聞を熟読し、19:00に店を出る


その男はスーパーで食材を物色する


その男はアパートに戻り20分で調理して食する


その男は夜11時までに映画を一本観る


その男は夜中12時には布団に入り眠る


その男は朝6時に目覚め、ラジオ体操をする


その男は朝7時に朝食を取る


その男は8時には家を出て、職場に向かう


その機械的な男を観察する悪魔は目を凝らす


その男は昼になると屋上で弁当を食べる


その男の隣りに悪魔はOLに化けて座る


その男は一瞬ビクッとくる


「隣りで食べてもいい?」


恐ろしく清楚で美しい女性だった


その男は人に話しかけられたのはどのくらいぶりか考える


しかしすぐ思考は消えた


悪魔はこの男をダークサイドへ導くべきかどうか値踏みしている


ふいに悪魔は後ろに気配を感じ、ライトセーバーを抜く


案の定ライトサイドのOLが太腿から取り出したライトセーバーで抜き切りつけてくる


悪魔は左にとんぼ返りしてよける


ベンチは真っ二つになる


その男はバランスを崩して倒れる


2人はライトセーバーで戦闘を続ける


その男は立ち上がり、2人の殺陣を見ている


OLが2人ライトセーバーを縦横無尽に降り続けてるだけで異様な光景だ


その男は残りの弁当を食べて、下に戻る


悪魔は宙を舞い、隣のビルに飛び移る


ライトサイドの女騎士は屋上の柵にぶつかり、地団駄を踏む


既に悪魔は雲の上に飛び上がってる


女騎士は太腿にライトセーバーを戻す


その男は感覚と意識が常に薄い


一見30代の男に見えるが、何年も前から年齢の勘定をしてない


17:30になり男はまたそそくさと会社を出る


悪魔は宙で頬を撫で、その男を見る


他を当たった方がいいかな?


悪魔は彼をダークサイドに導くのをやめる


その男は悪魔にも見放された


その男には絶望の夕焼け道が似合っていた


2015(H27)12/9(水)

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