51.無数の魔物
ギルドマスター、今は人類の命運を背負っているといっても過言ではない男……ウィッツ・スカルドは、魔人たちの拠点から少し離れた所で集まり、『合図』を待っていた。
その合図とは……。
『ゴオオオオオオオオォォォォォォォォォッ!!』
唸る轟音と共に、魔人たちの拠点が
「総員、突撃ッ!!」
ウィッツは、全力で叫び、先陣を切って走り出す。それに続くように、冒険者、兵士、召喚者。立場の違いを超えて、同じ場所に同じ目的で集まった人たちが共に走る。
確かに魔人は強い。人間一人じゃ、魔人を前に手も足も出ないだろう。
しかし、一人ひとりが弱くても、力を合わせれば大きな力になる。その術を、人間は持っている。
その勢いに任せて、魔人の元へと突撃を仕掛けたのだが……その最中。ウィッツは、目を疑うような光景を目の当たりにした。
――ギュギュギュギュギュギュギュギュギュギュギュギュンッ!
次から次へと上空に展開されていく、赤い魔法陣。それを見たウィッツは、なにか不穏なものを感じた。きっと彼だけではない。その光景を見た全員が、同じことを思っただろう。
そして、間もなく。その魔法陣全てから……魔物が姿を表したのだ。
その赤い魔法陣は、魔人の拠点周辺に留まらず、ウィッツたちの部隊の周りにも、その他の場所にも、次々と展開されていく。こうなっては最後、今さら逃げ場なんて無い。
「――総員、一時停止ッ! 上空の魔法陣を警戒せよッ!」
ウィッツは迷わず部隊を停止させ、魔法陣から次々に現れるであろう魔物を迎え撃つ準備をする。
そして、次々と展開されていった、上空の魔法陣から現れた魔物の数は――まるで森に生えている木の数を全て数えろと言われているかのような。そんな、途方に暮れる数の魔物が、天から降りそそぐ。
「……最悪、だ」
ウィッツは、思わずそんな言葉を漏らしてしまう。そうとしか言いようがない状況だったのだから、仕方がないだろう。
周りは、夜に現れるレベル、もしくはそれ以上かも知れない、凶悪な魔物に囲まれているのだから。それも、数えきれないほどの数に。
ウィッツだけではない。その光景を見た全員が、戦う事を諦め、自らの死を、人類の敗北を悟っただろう。
そんな誰もが絶望を感じたであろうその状況でも、まだ立ち上がろうとする人がいた。
「私は生き残る。そして、みんなを守る。それが私の――使命だから」
長く綺麗な黒髪を揺らし、無数の魔物を見てもなお怯まずに立ち上がる、一人の少女。
「――『物質錬成』」
そう口にすると、その少女の手には、ズッシリと重たい『機関銃』が生み出される。
引き金を引き――ババババババババババババッ!! 鼓膜が破けてしまいそうなほどの連射音と共に、無数の弾丸が押し寄せる魔物の大群に次々と風穴を開けていく。
その姿を見た、他の皆は――
「そうだよな、まだ負けた訳じゃない!」
「どうせ死ぬなら最後に足掻いてやる!」
「家族には生きて帰るって約束したんだ、負けてられるかよ!」
「行くぞみんな! こんな所で躓いてなんていられねえ!」
その少女の、諦めずに戦い続ける勇姿を見た人々の、一度は消えた闘志が……再び燃え上がる!
「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」」」
再び武器を取って立ち上がり、無数に現れる魔物を正面に見据え――次々と勝負を挑む。
無数の魔物と、無限の闘志。その二つのぶつかり合いが今、始まった。
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