23.討伐報酬と前金
通り過ぎるだけの予定だった街の、冒険者ギルド支部へと向かい、あの盗賊たちの身柄を引き渡して小銭を得て。
途中の街で食事をとったりしながらも馬車はどんどんと進み続けて、そろそろ夕方にでもなろうかとしていた頃。
「あれがクリディアさ。大きいだろう?」
目の前には、あの王国の首都にも引けを取らないほどの大都市が見えていた。
大きな街の中、真ん中にそびえ立つ、高級ホテルのような巨大な建物が一際目立っている。
「あの大きな建物が冒険者ギルドの本部だね。そして、来週に会議が行われる場所でもある」
……会議。それぞれの国の重要人物が集まり、魔族の襲来に対しての防衛をどこが主体となって行うか。それを決めるもので、俺と唯葉も、その会議に
「……会議までは、俺たちどうすれば?」
会議が行われるのはちょうど一週間後。それまで、少し時間がある。
「自由にしていて構わないよ。でも、せっかくこの街に来てくれたんだし……まずは冒険者ギルドに来てくれるかな。それに、魔人討伐の報酬と、仕事の前金も渡しておきたいからね」
……という訳で、俺たちはウィッツさんについていき、この街で一番大きな建物、冒険者ギルドへと向かった。
***
俺と唯葉は、普通の冒険者とかじゃ入れないような、高層階のさらに奥の部屋へと連れてこられてしまった。
一階や二階は冒険者らしき格好の人がたくさんいたのに、三階以上になるとギルドの職員っぽい人くらいしか歩いていない。
……こんな所に来てしまって、大丈夫だったのだろうか。
「まず、会議は七日後。その前日に打ち合わせをするから、今日から五日後まではこの街で自由に過ごしてもらって構わないよ」
……五日間か。長いのか、短いのか。
その自由期間で、唯葉のレベルも充分に上げておきたいな。いくらステータスが高いと言っても、まだまだレベルは低い。それに、俺のせいで軒並みステータスが下がってしまうのもあるし、念には念を重ねておきたい。
……そして、この流れでいくと、これから始まる魔族との戦争に、間違いなく俺たちも駆り出されるような気がするから。
ドルニア王国の奴らの言いなりになる気はないが……このクリディアのためになら、相応の報酬さえ貰えるならば動いても良いとも思えるし。
「会議の後……私たちも、魔族との戦いに?」
気になった唯葉は、ウィッツさんに尋ねる。
「今回はドルニア王国に防衛の実権を渡さないというのが目的だから、戦争への参加義務はないよ。……まあ、こちらから依頼はさせてもらうけどね。君たちは人類にとって、貴重な戦力なんだ。もちろん報酬だってはずむよ」
「それじゃ、お兄ちゃん。私たちもこの間に強くならないとだね」
「……そうだな」
魔人アニロア。あれでも、魔族のうちの、ほんの一握りの力のはずだ。あんな化け物じみた力の相手と、これから幾度も戦うことになるのだろう。
決して俺も、唯葉も。どちらが欠けることもなく、俺たちは元の世界へと帰らなければ。……そのためになら、俺たちは魔族だろうとなんだろうと、超えてやる。
「……そして、これが魔人討伐の報酬と、今回の仕事の前金、小金貨24枚」
そう言いながら、ウィッツさんは――ジャラジャラジャラッ!! と、俺たちが向かい合うテーブルの上に、山になるように置いた。
「小金貨……24枚も? 貰っちゃってもいいんですか?」
唯葉は、目の前の大金に逆に恐ろしくなってきたようで、ウィッツさんに聞き返す。
「もちろん。大陸に潜伏してた魔人を倒したんだから、このくらいは当然さ。魔人討伐分が大金貨2枚……まあ、わざわざ使いにくい大金貨で渡されても困るだろうから小金貨で渡すけどね。そして、仕事の前金は小金貨4枚だよ」
ほとんど魔人の討伐による報酬だった。……ところで、魔人と戦ったのは俺だけじゃないぞ。
「村の人たちには、報酬はないんですか?」
……そこのところも、ウィッツさんはちゃんと考えていたようで、
「あるよ。でも、一人一人に渡してたらキリがないからね。だから
「
「リーク……あの村長に、まとめて渡しておいたのさ。リークなら、ちゃんと村人たちにも分配してくれると思ってね。何なら自分の分すら、村の為に使っちゃいそうな人だからね、リークは」
……確かに、あの村人思いの村長ならば安心だ。
村のみんなにもちゃんと報酬が支払われてるなら良かった。俺なんか、村のみんながいなきゃあの場で返り討ちにされて終わりだったのだから。
「さてと。俺からの話は終わりだよ。それじゃあ、一週間後の会議、……よろしくね」
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