回答編 ちょい長版/単孔類に首ったけ♡



「右だとか左だとかって選択は、全くもって不毛な話だよ、とりちゃん」


関川くんはそう言って、私のこめかみに指を当て、ぐっと上に押し上げた。


「なにするのよ、もぅ」


睨む目に力が入らなくなる。ずるい。


「右のポッケにゃ歌がある。

左のポッケにゃハイパワー。


さて、どっちが欲しい?」


「そんな訳のわかんないこと言ってないで、今は私の問いに先に答えてよ。

関川くんの話はそのあとでしょ」


私の言葉を聞いているのかいないのか、関川くんはうっすらと笑みを浮かべると、こめかみに押し当てていた手を下に動かし、私の両手をそれぞれ掴んでそのまま自分のポケットの中に導き入れる。


右手の指には紙が触れた。

左手にはゴツゴツとした固い感触。


「どっちでもお好きな方を」


そう言って、関川くんは私の手を離した。

促されるままポケットから中身を取り出して、手元を見る。


右手に掴んだ紙は、2枚のチケットだった。真ん中に黒々としたゴシック体で書かれた文字をひと目見ただけで、ドキッとして息が止まりそうになる。行きたかったのに即ソールドアウトで取れなかった、大好きなジャズアーティストの来日公演。


「ち、ちちちちょっと! 関川くん、こここれ、どうやって取ったの!?」


思わず興奮して前のめりになってしまう私を、関川くんはなだめるように笑う。


「もう片方も見てよ?」


ああ、そうだった。そっちもあったんだった。

慌てて、握っていた左手を開く。


それは、真新しいピンク色のローターだった。


「これ、新作だって。例のサイトの週ランに載ってたんだ」


単孔類は最近、ご無沙汰だったから、可哀想な思いをさせてたよね、ごめん。でも、時間がないのは本当だけれども、できることはきちんとしてあげたいって思ってるんだよ、ぼくだって。

それでもまだ右とか左とかって言う?


そう言って私の顔を覗き込む関川くん。


返す言葉がなくなった私は、握ったままの両手でもって関川くんの胸を思いっきり叩いた。






単孔類に首ったけ♡/私の好きな単孔類はカモノハシです。ぬいぐるみも持っています。なにか他のものと勘違いしてるひとがいるみたいですけど、念を押しておきますよ。ええ、カモノハシのことなんですからね!!



※単孔類の使用許可/Mr.Kから取得済み


美空ひばり ~東京キッド~

https://www.uta-net.com/song/13842/

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る