第4話 魔女とクラスメイトたち
きょろきょろと見回す魔女。
そこに私の姿はなく、廊下には二年生の生徒が行きかっている。
天気は晴れで、時間はお昼休みという設定。
校舎も含めて、私が魔女の魔法を操作して作ったもの。
ただ、生徒については私の記憶から自動展開するようになっている。
言ってみればプレイヤー以外のゲームキャラクターみたいなかんじ。
だから、生徒一人一人の行動に対して私は指示できない。
操作しながら気づいたことだけど、こんなこともできるのね。
「──おや、どうしました?」
私の記憶から、クラスメイトの
「え、私?」
「そうそう。怪盗みたいなマスクに紫のスーツなんて注目度抜群じゃないですか。もしかして、誰かを探しちゃったりしてます?」
天然の茶髪をした軽い感じの貴士くん。
軟派な見た目と違って、本質を見極め行動する、頼りになる男子。
「探す……。そう、優子。
思い出すようにしてから、表情を明るくして魔女は答えた。
「あ、そうですか。いやー、心当たりはあるんですけどねー。お姉さん、IDどうしました?」
「ID?」
「来校する人は全員、IDカードを下げなきゃならない決まりなんですよ。どうしました?」
「え、えーと、無くしたから優子に頼もうかなって、思ってたのよ」
「なるほど。ちょっと待ってください」
そう言うと貴士くんは学校支給のスマホを取り出して調べた。
「あー。それじゃあ、お姉さん。説明、聞きましたよね?」
「え?」
「IDカードは位置も特定できるようになってるんですよ。つまり、無くしても敷地内なら、どこにあるか分かります」
「……」
「その反応がないばかりか、来客の情報もないですねー」
「……」
「お姉さん、うちの学校はそういう人を侵入者として認定し、拘束する規則になってるんで、ごめんなさい。捕らえます」
「!?」
その言葉と同時に、貴士くんの影が動いた。
それは魔女の影と交差し、さらに魔女の身体へ巻きつくように伸びていく。
貴士くんお得意の
「痛くはしないんで、おとなしくしてください」
「くっ……」
気遣って言う貴士くんだけど、魔女は抵抗した。
髪の毛が一本、ピンと飛んだかと思うと瞬間的に光がきらめいた。
「!……」
思わず顔を
影が消えると、魔女は窓へ跳び込んだ。
ガラスを割る派手な音をさせながら破片とともに外へ出るけど──。
「な……」
校舎から五メートルくらい先は闇。
何もない。
そこまでしか作っていないからね。
魔女は空中でくるっと一回転し、振ってくるガラス片を避けて着地。
そこへ……。
「待て!」
追撃するクラスメイトたちが次々と飛び降りてきた。
もちろんみんな、空中制御ができる。
降下しながら、それぞれ魔力を溜めて、捕縛の術を発動させようとしている。
「や!」
すると魔女は右手の平から閃光を放った。
「うっ……」
腕で目を覆い、術をキャンセルする捕縛者のみんな。
そして魔女は走り去る
すれ違うかたちだけど、大胆なことをするわね。
「う、どこだ……」
「あ、あそこ!」
「逃げ足の速いヤローね」
着地したみんなは、魔女の期待どおりに走る背中を追いかけて行った。
でも、その鬼ごっこもすぐに終わり。
向こうの校舎をちょっと越えればリセットされる。
で、本当の魔女は──。
「はあ……、はあ……、はあ……」
屋上でしゃがみ込みながら息を切らしてる。
いちおう球体内部の世界だし、身体はあっても肉体じゃないから、本来は息切れしないはずなのよね。
動揺がそう反応させているんだわ。
「優子……、やってくれるわね」
そう言う魔女の表情は、笑ってる?
まるで成長を喜んでいるような……。
「ふふ、優子。どんなに隠れていても、私が見つけ出してあげるわ」
立ち上がり、力強く決意する魔女。
うう、勘弁して。
「さて、お気に入りだけど、これじゃダメね」
魔女は右手を胸元にあてると、服装が紫のスーツから制服に変わった。
白の半袖ワイシャツに紅葉色のネクタイをして、紺のプリーツスカートをはいた、
しかも、マスクをなくして顔を別人にしている。
そこまでしなくても十代の身体だから違和感ないと思うけど、よっぽど素顔を見られたくないようね。
そして、魔女はそのまま屋上から校舎内へ行くドアへ向かった。
いつもなら鍵がかけられている場所だけど、開けといてあげる。
魔女が最初に設定した空間内の時間が一時間だった。
それは魔法の深いところにある設定だったから、あの時間では追えなかったけど、いまは魔女も操作できないし、この時間さえ過ぎればあとは自動的に、元の身体に戻ることができる。
それに、瞬間移動と可能な限りで、魔女の魔法を封じたつもりだったけど、まだいろいろありそう。
気をつけなきゃ。
トコトコ階段を下りていって、魔女は真っ直ぐ、三階にある異能戦技科二年B組の教室へ向かった。
私のクラス。
さっきの廊下にあったし、魔女が知っていておかしくないけど、よく一発で来られたわね。
ガラッと引き戸を開け、中に入ろうとする魔女。
「……!」
クラスメイト全員の視線を集めて、魔女が驚いているわね。
ちょっとかわいいかも。
「君は?」
すると、席を立ちあがりながら学級委員長の
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