第11話 戦いに出る子
「……」
無言で階段を下りていく、ほむらちゃん。
その先の広場になっているところに、白衣姿の
さっき、ほむらちゃんと話したときは立体映像だったけど、これは本物。
あらためて見るとこのツーショット、親子ね。
でも、最初に瑠羅ちゃんは、造ったって言ってたのよね。
だから人造人間のようなものかなって思ってたけど、機械的なところが見られないから、その実感がない。
能力者であれぐらいやる人はいるし、戦ったこともある。
「さすがだな。セキュリティを簡単に突破するとは」
なんかちょっと嬉しそうに言う鉄摩さん。
いや、セキュリティを突破させたらダメだと思うけど。
「随分といい趣味しているじゃねえか。瑠羅や
ほむらちゃんは、ムカッとしているのを隠さないで言った。
「ほっほっほ。セキュリティのものは全て商品開発のために試作したものだからね。私の趣味で造ったものではない」
「商品?」
「考えてもみたまえ。これだけの設備や資材、どうやって調達するか。当然、巨額の資金が必要になる。そこで私は持っている物好きな方に販売したり、支援してもらっているというわけさ」
「それで女か」
「男を造ってもつまらん。どうせ造るなら美しい女がいい。客やスポンサーも、そういった面々だけにしている。最低限、女であれば私も納得して造れるからね」
「けっ……」
あらためてムカつくほむらちゃん。
え、じゃあ何?
さっき通路に転がっていたマネキンみたいなのって、元々はそういう目的のものだったの?
腕四本のとかあったけど。
うわー、分からない。
ほむらちゃんがムカついていたのは、それに気づいたからなのね。
なるほど。
私もムカついてきたわ。
女をなんだと思っているのかしら。
「さて、君はここまで来たわけだが、私は
「はい、私がやります。父様」
そう言いながらニニちゃんが一歩、前に出た。
ニニちゃん?
待って、レのつく子がいるんじゃないの?
それにニニちゃん、見た目は十歳の女の子。
戦うっていっても……。
いや、見た目で判断してはいけないわね。
「私はそこで見ている。存分に戦いなさい、ニニ」
「はい、父様」
ニニちゃんに微笑むと、鉄摩さんは広場を見下ろせる通路に瞬間移動した。
その位置にいると、娘を見守る保護者というよりは、戦いを分析する人に見える。
そういえば瑠羅ちゃんがずっと結界を張っていたけど、今回はいないわね。
結界がいらないってこと?
でも、ほむらちゃんの右側には大きな機械とかがあって、壊れたらヤバそうなんだけど。
「──よろしいですか?」
確認するニニちゃん。
「ああ……」
静かに答えて構えるほむらちゃん。
「では、いきます」
それを受けて、ニニちゃんはグッと身体に力を込めた。
「ううぅ……」
ちょっと苦しそうにしながらも、身体から赤黒くて薄いオーラが立ち昇った。
これは……。
間違いない。
私のチカラ、
ニニちゃん、球体から玄を引き出しているんだ!
「むん!」
玄のオーラをまとった右手を振るニニちゃん。
そこからオーラは巨人の右手のように大きくなて、ほむらちゃんに
「!」
しゃがんでギリギリ
まずい。
これが玄である以上、触ることができない。
いや、正確には受け止めるような防御で触らない方がいい。
だって玄はあらゆるものに変化できるから。
例えば、玄で触れてから焼くことや凍らせること。
電撃、麻痺とかの他に、崩壊させることもできる。
その気になれば、炎を凍結させることも。
あんまり濃いと制御が難しくなるけど、あれぐらいなら多少、不慣れでも扱えそう。
「まだまだいきます」
そう言うとニニちゃんは左右の手を振って、次々とオーラの巨手を出した。
「ちい……」
するとほむらちゃんは両手両足から不動明王の炎を出した。
そしてその炎を緩衝材にして、巨手に触れないように受け流しつつ、体術で回避していく。
神様の炎だから玄にも対抗できる。
だけど、玄は変化させられるし、接触の時間が長いと飲み込まれたり散らされたりで、いろいろ不利になる。
それにここは広場になっているけど、狼羅ちゃんのときと比べて狭いから、連続で範囲のある攻撃をされると躱していくのは厳しい。
動作として、ニニちゃんは手を振っているだけだから、そんなに疲れることはない。
でも、ほむらちゃんは炎を使い、身体を動かし続けているから、やがては疲れてくる。
いつもは玄を使っている側の私だけど、使われると、とんでもなくやっかいね。
「どうしました」
クールな顔のまま、余裕の
「ふむ……」
上で見ている鉄摩さんも、一方的だな、みたいにして見てる。
「仕方ねえ……」
決意を呟くほむらちゃん。
ということは、もう一つの炎を使うつもりなんだ。
「いくぜ!」
気合いを入れて、切り替えようとした瞬間──。
「!?」
ドクンと大きな鼓動がニニちゃんの全身を震わせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます