第6話 炎と狼
一気に距離を詰め、ほむらちゃんに迫る
右、左のワンツーパンチから、右アッパーを繰り出す。
ほむらちゃんも合わせてそれらを
パワーもだけど、スピードもキレもすごいわね。
それは、ほむらちゃんが接触のたびに炎の力を加えていることからも分かる。
そうしないと防ぎきれずに吹っ飛ばされちゃうくらい、強烈なものなんだ。
しかもこれは基本技。
本当の力を込めたものじゃない。
バックステップをするのと同時に炎の柱を噴き上げ、距離をとるほむらちゃん。
「おらーっ!」
直径一メートル以上ある炎を前に、狼羅ちゃんは構わず突っ込んできた。
全身に魔力を展開しているようだけど、それは防御ではなく、身体強化。
さらに爪を立てるようにした右手が、魔力をのせて拡張した巨狼の一撃となって、ほむらちゃんの顔面に向かっていく。
「せやっ!」
ほむらちゃんはそれを左手で受け流しながら懐へ入り、右手で襟をつかんで狼羅ちゃんを背負い投げ。
狼羅ちゃんは両足を思いっきり振り上げ、背中から叩きつけられた。
さらにほむらちゃんは自分自身も倒れ込んで、狼羅ちゃんのお腹に炎を宿した左肘を落とした。
「ぐっ……」
威力が
ほむらちゃんはすぐさま離れ、次に備える。
すると狼羅ちゃんも、両足を回転させるようにしながら立ち上がった。
「さすが、やるな」
ニヤッと笑う表情から分かるように、それほどダメージになっていないみたいね。
「ギア、上げていくぜ!」
そう言うと狼羅ちゃん、再び全身に魔力を展開。
言葉どおり、今度は一段階、濃い魔力になっている。
つまり、スピードとパワーも一段階上昇したんだ。
「おーっ、ら!」
「!」
飛び込んで振り回される右前回し蹴りをギリギリしゃがんで
「ら!」
躱された回し蹴りの回転力から、左後ろ回し蹴りを放つ狼羅ちゃん。
しゃがんだ体勢のほむらちゃんは避けることができない。
やむを得ず、熱くて厚い炎を盾にしつつ両腕を十字に構えて防御。
そのまま思いっきり蹴り飛ばされ、宙に舞った。
「くっ……」
だけど、ほむらちゃんは空中で身体を一回転。
きれいに着地して、狼羅ちゃんを見やった。
何とかダメージを最小限にとどめたみたいね。
「まだまだ、いっけー!」
すると狼羅ちゃん、今度は右手を広げて床を叩いた。
五本の指、それぞれの方向へ一直線に衝撃波が走っていく。
魔力でできたその衝撃波は、ほむらちゃんの身長ほどに高く、広がるように向かってくる。
直撃じゃなくても、挟まれればその余波でダメージを受けてしまう。
「ちぃ……」
左右への回避を諦め、上へ高く跳んでやり過ごすほむらちゃん。
五つの衝撃波は勢いよく壁に激突。
バーンと弾けて、壁を揺さぶった。
「む……」
結界を張ってる
もしほむらちゃんに当たっていたら、身体もだけど、霊体にもダメージを受けていたわね。
「おーっ、ら!」
空中にいるほむらちゃんを狙って、狼羅ちゃんが再び飛び込みの回し蹴りを放った。
「!」
それを読んでいたほむらちゃん。
炎を使って空間を滑るようにして回避。
その右足をつかんで回転力を利用し、狼羅ちゃんを床に投げつけた。
「ぐう……」
うつ伏せに叩きつけられる狼羅ちゃん。
「うおおおーっ!」
そこへほむらちゃんが追い打ちで狼羅ちゃんの背中に両足を落とした。
「う……」
肘撃ちをしたときみたいに、両足は炎が宿っているうえに、落下速度のついた攻撃だから威力は強い。
大きな花びらみたいな炎が飛び散っていることからも、それが表れている。
「ううぅ……、ら!」
劣勢を挽回しようと、狼羅ちゃんは無理矢理、起き上がった。
「今度はこっちの番だ!」
狼羅ちゃんはそう言って構えるけど、炎はすでに舞いを始めていた。
「な……」
驚く狼羅ちゃんに構わず、横に円を描きながら、六つの豪炎が迫る。
上へ下へ、右へ左へ、次々と真っ赤な軌跡を残しながら狼羅ちゃんを求めて円舞を繰り広げる。
これは、ほむらちゃんの古武術、
回る六つの炎が、お坊さんの持つ
「だっ……、ぬう……、おお……」
パンチやキックなら手足で防ぎようもあるけど、炎となれば耐火耐熱の道具とか、魔法なんかで防ぐしかない。
でも狼羅ちゃん、どうやら攻撃重視タイプみたいだから、そういった道具もなく、魔法防御も苦手みたい。
離れながら頑張って防ごうとしているけど不十分。
豪炎を相手に追い詰められていく。
そこへさらに、ほむらちゃんが加わった。
「せいっ!」
突き出す右拳から射出された炎槍が狼羅ちゃんのお腹に命中。
「うっ……」
貫通する炎を受けて、一瞬、動きが止まった狼羅ちゃんに六つの炎は一斉に躍りかかった。
「ぐ、ぐわあああぁ────!」
合計七つの炎を浴びて、そのまま仰向けに倒れる狼羅ちゃん。
身体ではなく気力を焼かれ、手足を広げた大の字になって気を失った。
ということは戦闘不能。
ほむらちゃんの、勝利だ!
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