犬猿の仲だったオタクとギャルが兄妹になりました
つくも/九十九弐式
クラスにオタク嫌いで天敵のギャルがいる
「はは……マジ、この〇〇たん、萌えるよな」
「ははっ……今時、萌えるとか使うか? 何世代前のオタクだよお前?」
「何を申しますか! 拙者はちゃんとした現役高校生のオタクでござる」
「その『拙者』とか『ござる』も古すぎだろ」
男子高校生である俺はクラスメイトと盛り上がっていた。二人は俺の仲の良い、オタク友達であった。
俺の名は吉村浩介。なんて事のない普通の男子高校生だ。アニメ雑誌を見てオタク友達と盛り上がっている事からして、見ての通り俺はオタクだった。それは間違いのない事だ。否定する要素などない。
「ん?」
そんな俺の前に一人の少女が姿を現した。後ろには取り巻きのような少女が二人ほど。大体類は友を呼ぶ。俺の友達がオタク系の友達に対して、彼女の友達は言わばギャル系のような少女であった。
『天音鈴』
それが彼女の名である。派手目のメイクをして、それらしく服装を乱した彼女は不良生徒と呼ぶほどではないが、所謂『ギャル』とか、俺らオタクからすれば『ビッチ』呼ばわりしている。そういう類の女子生徒だ。
学年の援助交際してそうなランキングNO1に彼女は間違いなくなるであろう。実際のところそんな問題のありそうなランキングが存在するわけもないが。
今は援助交際とは言わないか。『パパ活』か。何にせよ同じようなものだ。
ともかく、彼女は俺の正反対の属性を持っている。相性が最悪の相手なのだ。言わば『天敵』と言ってもいい。
「ちょっと、何、教室でアニメ雑誌とか読んでるのよ? マジ、キモくない?」
そう、嘲笑を込めた笑みを浮かべ、鈴は言ってくる。
「うるさい! 教室で何読もうが、俺達の勝手だろうが!」
鈴は大のオタク嫌いらしくて、何かと俺に突っかかってくるのだ。それが俺と鈴が『天敵』である所以かもしれない。
「大体何なんだよ! 人の趣味を……いや、趣味っていうか趣味を含めた俺達自体かもしれないけど。なんでそうまで人を『キモい』だのなんだの、低俗な言葉で罵ってくるんだよ! このビッチ!」
「う、うるさい! 誰がビッチか! 私はビッチなんかじゃ……」
「なんだ? 意外と経験がないのか、『エンコー』とか『パパ活』とかしてそうに見えるけど」
「う、うるさい! 死ね! このオタク野郎」
鈴は顔を真っ赤にして言う。
「オタクで何が悪いんだ! 日本の経済は俺達が回してるんだぞ! 俺達がいなきゃ日本はもっと不景気だ!」
そんな事言ってた人がいたので便乗しておく。
このように俺と鈴は『オタク』と『ギャル』という、全く別の属性の持ち主であり、いわば犬猿の仲だったのだ。
――だからそんな俺達がまさかあんな関係になるなんて夢にも思っていなかったのである。
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