第376話 2015年8月 21

「リリィさん。俺は、家族を小さい時に無くした。


失った。


俺はその時、とても幸せだと思って暮らしていた。でも、本当は違っていた。母さんと父さんは別の方を見ていた。俺の方なんか見ていなかった。


そして、それが分かってから、すぐに、家族を失ってしまったんだ。


俺は、幸せを望むのが、怖いんだ。望むと無くしそうで……


あの時、幸せだって思わなかったら、家族はバラバラにならなかったんじゃないかって思ったりするんだ。


だから、俺は望まなかった。違うな、望めなかったんだ。

理由は、失う怖さから逃げるため。


でも、わかった。


何故か?


君のおかげだ。

君が俺に人を信じる事、幸せを望むことが怖いものでは無いって、行動で示してくれた。


それなのに俺は、君を認めなかった。

違う……

認めるのが怖かったんだ、きっと根っこは同じ、失う事への恐怖がそうさせたんだ。


でも、もういい。

俺には理解できたから……

俺の信じた相手は、俺から、俺の前から消えたりしない。


簡単な話だった。

シンプルに考えれば……

そうじゃない……

普通に考えれば、考えなくたって、分かり切っていたんだ。


それを俺は、リリィさんの気持ちを敢えて無視していた。

見ない様にしていた。

最初から、絶望の未来を前提に生きているから、俺は君が……

どうせ消えていく人だからと勝手に決めて、真実を見なくしていた。


ごめんなさい。


そして……

ありがとう……


ありがとうございます。


俺の為に、為だけに、全てをなげうって、来てくれて、そして、俺に未来を、幸せな君との未来を夢見れるようにしてくれて……


俺にとって、ゴールだった君との約束は、リリィさんにとってのスタートラインだった。

俺はそれに気付けすにここまで来てしまった。


それを謝らせて欲しい。

ごめんなさい。


ごめんね……


リリィさん……


それでね……


……俺は望むよ……


望みたいんだ……


望んでも……


いいよね……


……


リリィさんと幸せになる未来を……


……だから……


だから、俺と一緒に居て欲しい。


もう……

ここから帰るなんて言わないで……


俺と一緒に暮らそう。


一緒になろう。


俺の家族になってくれないか?」


リリィさんの目を見て俺は訴えた。

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