第308話 別離4

それでも、違うのは、俺は、今の俺は、もうこの頃とは違う。決して、昔に縛られて生きている様な事はない。俺に前を見ろ、夢を持てとそう言い残してチャンスを与えてくれて、最後まで心配してくれた満島先生や、俺の親代わりで、ずっと、望めば叶うと言って、見守ってくれていたオーナーや、今までの辛かった出来事を全て知る大切な友人のリリィさんや周りの人たちが俺を支えて、頼りにしてくれて、それを実感できている今の俺は、この止まったままの時計ではないんだ。


俺は動き出している。だから、簡単な事だ。こいつにも、俺の左腕に巻かれている大き目の腕時計も動かして、未来に一緒に進めよう。


そうだな、電池を入れて、母さんの位牌代わりに家に飾っておこうか……


丸一日かけて家の中の片づけを終わらせ、未だ余震の続くなか、テレビを付けてみると、福島第一原発が大変な事になっていた。

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